最新記事
シリーズ日本再発見

「AKB48」式アイドルが韓国アイドルより中国で人気の理由

2017年09月12日(火)16時46分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

2017年8月、横浜アリーナで開催されたアイドルフェス「@JAM EXPO 2017」に出演した中国のアイドルグループ「Idol School」(写真提供:Idol School)

<AKB48そのものではなく、AKB48に代表される日本のグループアイドルのビジネスモデルが、いつの間にか海外に広まっている。一説によれば、中国では2016年、200以上のアイドルグループが誕生したというが...>

今、中国に「アイドル戦国時代」が到来しているという。メンバーは中国人だが、スタイルは日本式。いわゆるグループアイドルと呼ばれる存在だ。

グループアイドルとはAKB48をイメージしていただければわかりやすい。「多人数の女性から構成され、卒業制度があり、ファンとの距離の近さを売りにする存在」とまとめられるだろう。日本のアイドルの歴史は長いが、直近で見ればモーニング娘。(1997年結成)を起点とし、AKB48(2005年結成)へと続く流れである。

中国のグループアイドルは、AKB48の関連グループとして秋元康がプロデュースし、日本でも名の知れたSNH48(=上海48、しかし後に提携関係を解消した)だけではない。中国の芸能コラムサイト「資本娯楽論」によると、かの国では2016年、200以上ものアイドルグループが誕生したのだとか。

テレビでは「天生是優我」「夏日甜心」「蜜蜂少女隊」などのオーディション番組が次々放送され、注目を集めている。日本のエンターテインメントが中国市場で存在感を失っている現状を考えると、スタイルとビジネスモデルだけが取り入れられた現状には驚くしかない。

【参考記事】「二次元経済」とは何か? 中国ビリビリマクロリンク取材記

2000年代前半以後、日本エンタメは中国で存在感を失った

かつて日本は、アジア圏におけるコンテンツ大国として影響力を誇っていた。特に中国においては改革開放が始まった1980年代に、「米国帝国主義のコンテンツの輸入解禁はまだ早いが、日本ならばOK」という微妙な政策判断の下、日本コンテンツは一時代を築いた。

映画『君よ憤怒の河を渉れ』の大ヒットにより、高倉健と中野良子は中国で大スターとなった。その記憶はいまだに強く残っており、高倉健が2014年に死去した際には中国の多くのメディアが特集を組んだほどだ。

その後も山口百恵や酒井法子、CHAGE and ASKAなど、中国で一定の知名度、人気を得た芸能人・ミュージシャンは登場したが、その流れが続いたのは2000年代前半までだろうか。今はまったく存在感を失っている。

もちろん、一部には熱烈なファンが存在している。AKB48の総選挙では中国人ファンによる「中華砲」が結果を左右するとも言われていたが、ファンの数で見れば決して多いとは言えない。ニッチな趣味で人数は少ないが、それだけに結束力の高い人々がお金を注ぎ込んだというのが実情だ。

なぜ日本エンタメは存在感を失ったのか。大きく2つの理由がある。第一に、経済成長を遂げた中国を始めとするアジア諸国が、世界各国の音楽・芸能業界が本腰を入れて進出する激戦場となったためだ。特に官民一体となってコンテンツ輸出に取り組んだ韓国は大きな成功を収めた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は続落、「ディープシーク・ショック」

ビジネス

独メルセデス、第4四半期利益率は自社予想上回る見通

ワールド

米政権、対外援助USAIDの職員数十人を休職に=関

ワールド

ロシアで製油量が増加 米制裁対象の原油から燃料輸出
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 2
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 3
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」で記録された「生々しい攻防」の様子をウクライナ特殊作戦軍が公開
  • 4
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 5
    オーストラリアの砂浜に「謎の球体」が大量に流れ着…
  • 6
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 7
    日本や韓国には「まだ」並ばない!...人口減少と超高…
  • 8
    「これは無理」「消防署に電話を」出入口にのさばる…
  • 9
    天井にいた巨大グモを放っておいた結果...女性が遭遇…
  • 10
    AI相場に突風、中国「ディープシーク」の実力は?...…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 6
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 7
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 8
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 9
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 6
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 7
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中