最新記事
シリーズ日本再発見

なぜ日本の街にはゴミ箱や灰皿が少ないのか

2017年03月24日(金)16時13分
高野智宏

イタリアにある灰皿付きゴミ箱 AlexStepanov-iStock.

<街中にゴミ箱も灰皿も少ないのに「世界でもっとも清潔」だと、日本の街並みは外国人から高く評価されている>

【シリーズ】外国人から見たニッポンの不思議

「ゴミひとつ落ちていない!」や「世界でもっとも清潔な国だ」、そして「歓楽街ですらキレイなんて!」など、訪日外国人をインタビューするテレビ番組やネットの投稿などで、日本の清潔な街並みを賞賛する声を聞くことが多い。

世界最大手の旅行クチコミサイト「トリップアドバイザー」の「旅行者による世界の都市調査」(2014年)でも、2位のシンガポール、3位のベルリンを抑え、街の清潔度で東京が1位を獲得と、その評価は世界的なようである。

驚きの声と同時に彼らから上がるのが、「街にゴミ箱は少ないのになぜ!?」という疑問だ。確かに、1995年の地下鉄サリン事件以降、テロ対策を名目に首都圏を中心に街中のゴミ箱は閉鎖・撤去されていったが、それ以降、コンビニエンスストアの店頭を除けば、現在もその数は大幅に減ったままだ。

また、灰皿に関しても、以前は東京・銀座の中央通りに等間隔で置かれていた灰皿がすべて撤去されるなど、2002年以降に各自治体で制定されていった「路上喫煙禁止条例」を機に、路上の喫煙環境は大幅に縮小されている。

一方、欧米ではどうか。アメリカではニューヨークなどの大都市では1ブロックごとに大きなゴミ箱が配置されているものの、つねにゴミが溢れている状態だという。

ヨーロッパ各国でも灰皿付きのゴミ箱が多く設置されているが、フランクフルト在住のマリア・ドイチュさんによれば、「ドイツでは歩きたばこがごく普通のこと。街中に灰皿もありますが、吸い殻のポイ捨てもあたりまえです」といった実情だ。

ゴミ箱も灰皿も少ないのに、なぜ日本の街にはゴミも吸い殻も落ちていないのか――。多くの訪日外国人は日本の街、そして、日本人の清潔さを賞賛する一方で、あまりの清潔さにある種の畏怖にも似た不思議な感情を持っているのだろう。

【参考記事】日本に観光に来た外国人がどこで何をしているか、ビッグデータが明かします

日本人のマナーの良さは高く評価されている

そんな外国人の疑問に答えるならば、手前味噌ながら、やはり「一般的に日本人はモラルが高くマナーも良いから」という回答が1つ挙げられるだろう。

特に吸い殻のポイ捨てに関する外的要因としては、前述した路上喫煙禁止条例の全国的な施行に加え、駅周辺を中心に路上喫煙所が設けられていることも大きい(ただし、最近撤去された渋谷駅前のハチ公像脇をはじめ、路上喫煙所は減る傾向にある)。また、喫煙できる場所が減ったからこそ携帯灰皿の所持率が高くなり、ポイ捨ての減少につながっているのかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ロイターネクスト:米第1四半期GDPは上方修正の可

ワールド

バイデン氏、半導体大手マイクロンへの補助金発表 最

ビジネス

米国株式市場=下落、予想下回るGDPが圧迫

ワールド

中国の対ロ支援、西側諸国との関係閉ざす=NATO事
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中