AIの経済浮揚効果、炭素排出コスト上回る=IMF報告書

IMFは、AIの活用で2025─30年に世界の経済成長率が年間ベースで約0.5%押し上げられ、AI利用に伴う温室効果ガスの排出量増加に伴うコストを上回るとする報告書を公表した。2023年6月撮影(2025年 ロイター/Dado Ruvic/Illustration/File Photo)
[22日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は22日、人工知能(AI)の活用で2025─30年に世界の経済成長率が年間ベースで約0.5%押し上げられ、AI利用に伴う温室効果ガスの排出量増加に伴うコストを上回るとする報告書を公表した。
IMFは春季年次会合に合わせて報告書を公表。現在のエネルギー政策の中でAI普及が進んだ場合、25─30年に温室効果ガス排出量は累計で推定1.2%増加。環境配慮型の政策を取れば、増加分は1.3ギガトンに抑えられるとした。
排出の社会的コストを1トン当たり39ドルで計算し、社会的コストは507億─663億ドルになると試算した。その上で、AIがもたらす世界成長率の年率0.5%ポイント押し上げに伴う所得増加よりも低いコストにとどまると指摘した。
報告書では、成長率の押し上げ効果は世界で均等ではないとも指摘し、社会全体へのコストを最小限に抑えるよう求めた。
AIの普及に伴い、エネルギーを大量に消費するデータ処理の増大は不可避だ。IMFは、AI関連の世界電力需要は、30年までに約1500テラワット時と現在の3倍以上となる可能性があると推計。現在のインド全体の電力消費量に匹敵する量となる。「懸念されている温室効果ガスの排出量増加に拍車をかける」とも指摘した。
独立系アナリストは、AIの経済や環境への影響は、その活用方法に大きく左右されると指摘。専門家からは「政府や企業は、AIが公平に持続可能な方法で活用されるよう積極的な役割を果たす必要がある」とし、格差是正に向けた研究開発資金や政策措置が必要との指摘も出ている。