仏「核の傘」提案、欧州首脳の間で好意的受け止めと慎重論が交錯

フランスのマクロン大統領が3月5日、米国に代わって同国が欧州のパートナー諸国に「核の傘」を提供する方針を示したことについて、スウェーデンやデンマークなどの首脳から好意的に受け止める声が聞かれた。同日撮影の France Televisions提供の動画より取得(2025年 ロイター)
[ブリュッセル 6日 ロイター] - フランスのマクロン大統領が5日、米国に代わって同国が欧州のパートナー諸国に「核の傘」を提供する方針を示したことについて、スウェーデンやデンマークなどの首脳から好意的に受け止める声が聞かれた。ただ欧州は長年、米国の核抑止力に依存してきただけに指導者の間には慎重論も根強い。
スウェーデンのクリステション首相は、欧州の防衛力強化を話し合う欧州連合(EU)特別首脳会議に先立って「われわれスウェーデン国民は、他のほとんどの国の人たちと同じくできる限り核兵器保有は控えたい。しかし現時点では、2つの隣国(英国とフランス)が核保有国であることに喜びと感謝を感じるべきだ」と語った。
その上で「フランスが(核の傘提供に)前向きなことは素晴らしいと思う」と付け加えた。
デンマークのフレデリクセン首相は「今は全てのことを協議しなければならないと考えている。だからあらゆる良いアイデアは議論の対象にする必要がある」と述べた。
ウクライナの次にロシアから狙われるとの危機感があるバルト三国の一つ、リトアニアのナウセーダ大統領はマクロン氏の提案を「大変興味深いアイデアだ。核の傘はロシアに対する非常に重大な抑止として役立つ」と評価した。
マクロン氏が初めてフランスの核戦略に他の欧州諸国を含める考えを提示したのは2020年だが、当時の各国の反応は乏しかった。
ただトランプ米政権がロシアに接近し、その肩を持つような姿勢でウクライナに和平を強要する構図になったことで事態が一変した。
ドイツの次期首相が確実視されるキリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首は、ドイツは米国の核の傘を以前ほど当てにしない必要があるかもしれないと述べ、フランスと英国の核抑止力に期待を寄せている。
マクロン氏は5日の演説で、こうしたメルツ氏の意向にも言及した。
ただ専門家によると、米国が欧州に提供している核戦力をフランスがそのまま代替する能力はない。
こうした中でラトビアのシリニャ首相は、フランスの核兵器を受け入れるかどうか答えを出すのは「時期尚早だ」と述べた。
またチェコのフィアラ首相も「検討は可能だが、現段階でわれわれの安全保障は米国との緊密な協力によって保証されている」と説明した。