ニュース速報
ワールド

仏「核の傘」提案、欧州首脳の間で好意的受け止めと慎重論が交錯

2025年03月07日(金)10時01分

フランスのマクロン大統領が3月5日、米国に代わって同国が欧州のパートナー諸国に「核の傘」を提供する方針を示したことについて、スウェーデンやデンマークなどの首脳から好意的に受け止める声が聞かれた。同日撮影の France Televisions提供の動画より取得(2025年 ロイター)

[ブリュッセル 6日 ロイター] - フランスのマクロン大統領が5日、米国に代わって同国が欧州のパートナー諸国に「核の傘」を提供する方針を示したことについて、スウェーデンやデンマークなどの首脳から好意的に受け止める声が聞かれた。ただ欧州は長年、米国の核抑止力に依存してきただけに指導者の間には慎重論も根強い。

スウェーデンのクリステション首相は、欧州の防衛力強化を話し合う欧州連合(EU)特別首脳会議に先立って「われわれスウェーデン国民は、他のほとんどの国の人たちと同じくできる限り核兵器保有は控えたい。しかし現時点では、2つの隣国(英国とフランス)が核保有国であることに喜びと感謝を感じるべきだ」と語った。

その上で「フランスが(核の傘提供に)前向きなことは素晴らしいと思う」と付け加えた。

デンマークのフレデリクセン首相は「今は全てのことを協議しなければならないと考えている。だからあらゆる良いアイデアは議論の対象にする必要がある」と述べた。

ウクライナの次にロシアから狙われるとの危機感があるバルト三国の一つ、リトアニアのナウセーダ大統領はマクロン氏の提案を「大変興味深いアイデアだ。核の傘はロシアに対する非常に重大な抑止として役立つ」と評価した。

マクロン氏が初めてフランスの核戦略に他の欧州諸国を含める考えを提示したのは2020年だが、当時の各国の反応は乏しかった。

ただトランプ米政権がロシアに接近し、その肩を持つような姿勢でウクライナに和平を強要する構図になったことで事態が一変した。

ドイツの次期首相が確実視されるキリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首は、ドイツは米国の核の傘を以前ほど当てにしない必要があるかもしれないと述べ、フランスと英国の核抑止力に期待を寄せている。

マクロン氏は5日の演説で、こうしたメルツ氏の意向にも言及した。

ただ専門家によると、米国が欧州に提供している核戦力をフランスがそのまま代替する能力はない。

こうした中でラトビアのシリニャ首相は、フランスの核兵器を受け入れるかどうか答えを出すのは「時期尚早だ」と述べた。

またチェコのフィアラ首相も「検討は可能だが、現段階でわれわれの安全保障は米国との緊密な協力によって保証されている」と説明した。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、ロシアが和平合意ならエネルギー部門への制裁緩和

ワールド

トランプ米政権、コロンビア大への助成金を中止 反ユ

ワールド

ミャンマー軍事政権、2025年12月―26年1月に

ビジネス

アングル:お茶大国中国で苦戦のスタバ、現地嗜好踏ま
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 5
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 6
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 7
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中