米財務長官がカナダ首相を「ばか者」扱い、関税政策の正当性主張

ベッセント米財務長官は3月6日の講演で、トランプ政権の関税に報復措置を講じる国はさらに高い関税に直面すると警告し、カナダのトルドー首相を「ばか者」と罵倒した。同日、ニューヨークで撮影(2025年 ロイター/Jeenah Moon)
David Lawder Ann Saphir
[ニューヨーク 6日 ロイター] - ベッセント米財務長官は6日、ニューヨーク経済クラブ向けに講演し、トランプ政権の関税に報復措置を講じる国はさらに高い関税に直面すると警告し、カナダのトルドー首相を「ばか者」と罵倒した。
ベッセント氏は「トランプ大統領は何度も関税という言葉が好きだと言っている。恐らくその次に好むのは『相互的』だろう。あなたがジャスティン・トルドーのようなばか者ならば報復に動き、関税がさらに上がる。報復を控えようとするなら、商務省や通商代表部(USTR)と話をしてほしい。彼らはいずれも私の電話番号を把握しており、私としても外国のカウンターパートと協議するのは喜ばしい」と語った。
その上で関税政策の効果について「1つ目は適切な財源となり、2つ目はわが国の重要産業とその雇用を守ること。3つ目は(トランプ氏が)加えたもので、交渉手段として使われている」と説明するとともに、関税から得られる「相当な」規模の収入によって、チップ非課税などの形で所得分布下位50%の層の減税に役立つと述べた。
ベッセント氏はトランプ大統領が「国際経済システムのバランスを取り戻すための積極的なキャンペーン」を始めたと宣言。米国の需要を中心に世界の輸出を吸収してきた数十年来の貿易システムは破綻し、持続不可能であり、関税がその修正に役立つとした。
「安価な製品へのアクセスは『アメリカンドリーム』の本質ではない」と説明。「『アメリカンドリーム』はいかなる国民でも繁栄、上昇志向、経済的安定を達成できるというコンセプトに根ざしている。あまりにも長い間、多国間貿易取引の設計者はこのことを見失ってきた」と語った。
<制裁>
ベッセント氏は、迂回の機会をつくり出すような「やる気のない」制裁はこれ以上発動しないとし、今後は「最大限の影響を即座に与えるため、明確かつ積極的に」実行すると述べた。
バイデン前大統領によるロシア産エネルギーに対する制裁を「ひどく弱い」ものだと指摘し、ロシアがウクライナでの戦争に資金を供給し続けることを許したとの認識を示した。
「現政権は制裁強化を維持し、和平交渉に有利に働くのであればちゅうちょなく『全面』制裁に踏み切るだろう」と述べた。
イラン制裁については「最大限の圧力」を行使すると明言。「イランの石油部門とドローン(無人機)製造能力を停止させるつもりだ」とした上で、「イランを再び無一文にすることがわれわれのアップデートした制裁政策の始まりとなる」と話した。
<金融規制緩和>
ベッセント氏は金融規制緩和にも言及。トランプ政権は銀行が米経済を活性化できるような「包括的かつ積極的な取り組み」を主導していくと強調し、最優先課題は規制当局が銀行を監督する方法を「根本的に見直す」ことだとした。
銀行業界は長らく、現在の監督制度が不透明で主観的、不必要なほどに抑制的だとの不満を表明している。
ベッセント氏もこうした懸念を共有し、銀行監督機関は一通りのチェックではなく、「重大な金融リスク」の対応に専念するべきだとの見方を示した。
具体的には、金融安定監督評議会(FSOC)のような複数の当局が参加する機関を活用し、統一的な規制アプローチを取る計画だという。
銀行規制当局の一体的な運営に触れた際には「明確にしておくと、これは機関の統合を意味するのではなく、規制当局が互いに、そして業界と並行して仕事をするような、財務省を介した調整を意味する」と述べ、トランプ政権が検討しているとうわさされていた既存当局の統合を否定する姿勢を見せた。
また、資本規制については「補完的レバレッジ比率(SLR)」を見直しが必要な事項として挙げた。