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米ロ、ウクライナ紛争終結へ協議継続で合意 サウジで高官会合

2025年02月19日(水)06時42分

米国とロシアは18日、サウジアラビアの首都リヤドでウクライナ紛争の停戦などを協議する初の高官会合を開いた。同日撮影(2025年 ロイター/Russian Foreign Ministry/Handout via REUTERS)

[リヤド/モスクワ/ワシントン 18日 ロイター] - 米国とロシアは18日、サウジアラビアの首都リヤドでウクライナ紛争の停戦などを協議する初の高官会合を開いた。米政府は会合後、紛争終結への道筋を模索し、さらなる協議を重ねる方向で合意したと発表した。

会合は4時間半にわたり行われ、米国からはルビオ国務長官、ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)、ウィトコフ中東特使、ロシアからはラブロフ外相、ウシャコフ大統領府外交政策顧問らが出席した。 

当事者であるウクライナは参加しなかった。

米国務省報道官によると、「全ての当事者が受け入れ可能で、持続的かつ永続的な方法で可能な限り早期」に戦争を終結させるため、高官級チームを任命すると明らかにした。米ロの外交関係の正常化に向け「二国間関係における懸案事項」に対処するための体制構築などについても協議が行われたという。

ルビオ長官は会合後「今回の会合は長く困難な道のりの第一歩で、重要な一歩だった」と言及。トランプ大統領は戦争終結に向け迅速な行動を望んでおり、公平で永続的かつ持続可能な合意を目指しているとし、ウクライナ、欧州のパートナー、ロシアを含む全ての関係者が受け入れ可能な合意を目指していると述べた。 

ロシア側には「真剣な交渉に着手する用意がある」と確信したとしつつも、和平に達するには全ての当事者による譲歩が必要とも指摘。欧州連合(EU)もいずれかの時点で関与する必要があり、いかなる解決策も全ての当事者によって受け入れられるものでなければならないと強調した。

ウォルツ補佐官は、戦争は恒久的に終結する必要があり、そのためには領土を巡る交渉が必要になるとし、今後の交渉ではウクライナの領土問題のほか、安全保障を巡る協議が含まれるだろうと述べた。    

また、ウォルツ氏によると、トランプ氏とプーチン氏の対面形式での会談の日程は現時点で決まっていない。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア・ウクライナ戦争の終結に向けた協議はウクライナ抜きでは実施できないと改めて強調。公正な平和を確保するために、ウクライナの安全保障に関する協議に米国のほか、ウクライナ、欧州が参加しなくてはならないと述べた。

ドイツのショルツ首相も「ウクライナの頭越しに決定を下すべきではない」と述べた。

<ラブロフ氏、NATO拡大容認できずと再表明>

ロシアのラブロフ外相も会合後の記者会見で、ウクライナ紛争の解決に向けた道筋を確立し、外交使節団の障壁を取り除くことで合意したと表明。今回の協議は有意義なものだったとし、ロシアと米国は互いの意見を聴き、理解し合い、両国間の協力関係を完全に回復するための条件整備で合意したと語った。

同時に、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟は容認できないと改めて表明。「プーチン大統領がこれまでも繰り返し強調したように、NATOの拡大とウクライナのNATO加盟は、ロシアの国益と主権に対する直接的な脅威だと説明した」と述べた。

その上で「NATO加盟国の軍隊が展開されるのが、EUや個々の国の旗の下であったとしても、何も変わらないと説明した。当然、ロシアが容認できるものではない」とし、英国のスターマー首相が提案したNATO加盟国がウクライナに平和維持部隊を派遣する案についても否定した。

ロシア外務省のザハロワ報道官はモスクワで記者団に対し、NATOがウクライナの加盟を認めないだけでは「不十分」とし、将来の加盟の可能性に関する約束を撤回するなど、さらに踏み込んだ行動を取るべきと語った。

<譲歩みられず>

ロシアはいかなる譲歩も示唆せず、米当局者らも会合で譲歩が得られたとは主張していないため、協議が和平交渉に発展するかどうかについては不透明感が漂う。

オバマ元政権で駐ロシア大使を務めたマイケル・マクフォール氏はXで「プーチン大統領が和平交渉に向け一歩でも譲歩する意向があるという証拠は、これまでのところ全くみられない」と述べた。

<外交使節団の機能回復で合意>

米ロは今回の会合で、外交使節団の通常機能を相互に回復させることで合意。ロシアによるウクライナ全面侵攻などを受け米国がこれまでにロシアに課した外交使節団の制限が大幅に緩和される可能性がある。

ルビオ長官は「対話の経路を維持するために、通常の機能を果たせる活発な外交使節団が必要になる」とし、第一段階として、米ロがそれぞれの外交使節団の機能を迅速に回復させるための実務者を任命することで合意したと明らかにした。

ただ、具体策については言及しなかった。米国務省からもコメントは得られていない。

ロシア外務省によると、ラブロフ外相はリヤドでの会合に先立ち15日に実施したルビオ氏との電話会談で、在米ロシア使節団の機能について協議していた。

ロイター
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