EU、AI・バイオ技術・クリーンエネ強化で国際競争力向上へ
欧州連合(EU)欧州委員会は29日に発表する提言「競争力コンパス(羅針盤)」で、人工知能(AI)とバイオテクノロジー、価格が手ごろなクリーンエネルギーなどの分野を強化することで国際競争力を高め、米国や中国に対抗する指針を示すことが分かった。写真はフランスのロンバール経済財務相。パリで22日撮影。(2025年 ロイター/Benoit Tessier/File Photo)
[ブリュッセル/パリ 24日 ロイター] - 欧州連合(EU)欧州委員会は29日に発表する提言「競争力コンパス(羅針盤)」で、人工知能(AI)とバイオテクノロジー、価格が手ごろなクリーンエネルギーなどの分野を強化することで国際競争力を高め、米国や中国に対抗する指針を示すことが分かった。欧州委の草稿をロイターが入手した。
EUは、フランスなどの加盟国から企業への規制を簡素化するよう圧力を受けている。また、米国での企業に対する規制を緩和すると公約しているトランプ米大統領は世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)へのメッセージでEUに規制緩和を促した。トランプ氏は、EUからの輸入品に新たな関税を課すとも脅している。
提言の草稿にはイノベーションを通じて生産性を向上させ、製造業の脱炭素化を図るため今後2年間に予定されている29の対策と戦略の概要を記載。「今こそ行動を起こす時だ」とし、「緊急にギアとアプローチを転換しなければ、大経済圏、投資先、製造業の中心地としてのEUの将来が危うくなる」と危機感を示した。
その上では欧州はAIや先端素材、バイオテクノロジー、クリーンエネルギー、ロボット工学、宇宙開発といった「明日の経済」で重要となるハイテク分野の最前線に立つ必要があると強調した。
この提言は、前イタリア首相で前欧州中央銀行(ECB)総裁のマリオ・ドラギ氏が発表した報告書「ドラギリポート」の一部に呼応している。同報告書はEUが米国や中国と歩調を合わせるために産業政策を調整し、大規模な投資をするように促している。
欧州委は今年2月下旬、企業の持続可能性に関する報告義務を25%削減し、米国の3倍に達することもあるエネルギー価格を引き下げることを盛り込んだ「クリーン産業ディール」を発表予定だ。
競争力コンパスの草稿は、欧州委が化学物質を管理するEU規則を改正し、AIの開発を推進し、革新的なスタートアップ企業が事業を拡大する上での障壁を取り除くことを目指すと言及。また、EUの加盟27カ国のばらばらになっている産業政策や支援策を、エネルギー供給網やデジタルインフラ、AI、極めて重要な医薬品の製造などの分野でより連携させるように促すとしている。
一方、ロイターはフランスのハダド欧州相が今月28日にEUの閣僚らに提出予定の20日付の文書も確認した。文書では、EUが過去数年間に成立させた環境規制が米国の競合企業に対する欧州企業の競争力を低下させていると批判。企業のデューデリジェンス(資産査定)に関するEUの新指令を無期限に延期し、EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の施行を2年延期することを提案している。
また、銀行に対する国際的な資本規制「バーゼル3」の最終規則の適用開始を1年延期して2027年にするように働きかけている。
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