メルケル前独首相、トランプ氏との付き合い方で教皇に助言要請=回顧録
11月21日、メルケル前ドイツ首相(写真右)が26日に発行される自身の回顧録で、トランプ米次期大統領(共和党、写真左)が2016年に大統領選で初勝利した際、ローマ教皇フランシスコにトランプ氏との付き合い方への助言を求めたと明かしていることが分かった。写真は2018年11月、フランスのパリでの代表撮影(2024 ロイター)
Thomas Escritt
[ベルリン 21日 ロイター] - メルケル前ドイツ首相が26日に発行される自身の回顧録で、トランプ米次期大統領(共和党)が2016年に大統領選で初勝利した際、ローマ教皇フランシスコにトランプ氏との付き合い方への助言を求めたと明かしていることが分かった。20日夜にドイツの週刊紙「ディー・ツァイト」が回顧録の抜粋を掲載した。
回顧録の題名は「フリーダム(自由):1954―2021年の記憶」で、30カ国を超える国で刊行される。執筆したのは今月5日の米大統領選の前で、民主党候補のハリス副大統領がトランプ氏を打ち負かすことへの「心からの希望」を綴っている。米国でも他国から1週間後に発行され、良好な政治関係を築いたオバマ元大統領とともに首都ワシントンでのイベントで披露する。
メルケル氏は、トランプ氏がロシアのプーチン大統領などの権威主義的な指導者に心酔しているように見えたと指摘し、いかに付き合いづらかったかを詳述した。トランプ氏について「政界入りする前の不動産開発業者の視点から全てを見ていた」とし、「それぞれの土地は一度しか売りに出されず、手に入れなければ他の誰かに取られる。それが彼の世界観だった」と説明した。
メルケル氏が一般論として「根本的に異なる見解を持つ」人々との付き合い方への助言を教皇に求めた際、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を望むトランプ氏のことを指していると教皇は直ちに理解したとして「曲げろ、曲げろ、曲げろ、しかし壊れないようにしろ」と言われたと記した。
ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領については「軽蔑されることを嫌がり、いつでも暴言を吐く用意のある人物」とし、「それを幼稚で情けないと思うかもしれないし、首をかしげるかもしれない。しかし、それはロシアが地図から決して消えることがなかったことを意味する」と記した。
22年のウクライナ侵攻がメルケル氏の退任を待ったタイミングだったと示唆しているとみられる場面もある。プーチン氏がメルケル氏に対して「あなたはいつまでも首相であるわけではなく、そうなれば彼ら(ウクライナ)は北大西洋条約機構(NATO)に加盟するだろう」と語り、「私はそれを阻止したい」と付け加えたと明かした。
その上で、中・東欧の一部の指導者らはロシアが消滅することへの希望的観測を持っていたとして「私は彼らを責めることはできない(中略)しかしロシアは手厚く核武装して存在していたのだ」と指摘した。
ドイツで最初の女性首相となったメルケル氏は16年間の在任中、欧州で最も強力な政治指導者として君臨。トランプ氏に対する毅然とした態度や、自由や人権といった価値観を頻繁に口にする姿勢は真の「自由世界の指導者」との評価を受けた。この称号は、伝統的には米大統領だけに与えられていた。
一方、ロシアによるウクライナへの侵攻や現在のドイツ経済の低迷を踏まえ、メルケル前政権がロシア産エネルギーに大きく依存するようになったことに問題があったとの批判も出ている。