ニュース速報
ワールド

アングル:マスク氏の100万ドル贈呈、法の限界に挑戦 専門家の見解割れる

2024年10月23日(水)18時47分

10月23日、米大統領選でトランプ前大統領を支持する実業家イーロン・マスク氏は「言論の自由と銃所持の権利」を支持する請願書に署名した激戦州の登録有権者の中から投票日まで毎日1人に100万ドルを配ると発表したが、この賞金が違法がどうかを巡って専門家の見解が割れている。写真は17日、ペンシルベニア州フォルサムで開かれた「アメリカPAC」の集会でスピーチするマスク氏(2024年 ロイター/Rachel Wisniewski)

Jack Queen

23日 ロイター] - 米大統領選でトランプ前大統領を支持する実業家イーロン・マスク氏は「言論の自由と銃所持の権利」を支持する請願書に署名した激戦州の登録有権者の中から投票日まで毎日1人に100万ドルを配ると発表したが、この賞金が違法がどうかを巡って専門家の見解が割れている。

連邦法は投票や有権者登録と引き換えに金銭などを支払うことを禁じている。

左派系のブレナン司法センターのダニエル・ワイナー氏は、違法性を指摘する声が確かに出ているとし「法律の限界に挑戦するマスク氏の行動パターンの一環だ」と述べた。

キャピタル大学ロースクール教授で元連邦選挙委員会(FEC)委員長のブラッド・スミス氏は、請願書への署名と有権者登録は別物であり、恐らく違法性はないだろうと指摘。「報酬がもらえるかもしれないという事実だけでは、特定の活動に対する支払いには該当しない」と述べた。

一方、ペンシルベニア州のシャピロ知事(民主党)は、マスク氏の措置を「深く憂慮」しているとし「法執行機関による調査」を求めた。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のリチャード・ヘイセン法学教授は、有権者登録を直接促すものではないが、タイミングや激戦州の有権者のみを対象にしていることを踏まえれば、請願書への署名は単なる口実だと指摘。賞金を贈るのは違法と述べた。

同教授によると、米司法省の選挙犯罪マニュアルでは、賞金を受け取れるチャンスが違法な支払いに該当するケースがあると明記されている。

超党派団体キャンペーン・リーガル・センターのアダブ・ノティ氏も、有権者登録を条件に金銭を渡すのは違法だと主張している。

ブレナン・センターのワイナー氏は、法的に疑問が残るが、グレーゾーンだと指摘。結局のところ「請願書への署名が有権者登録を促す単なる口実なのか」という問題に行き着くとの認識を示した。

この点について、キャピタル大学のスミス氏は、マスク氏には請願書への署名を求めるもっともらしい理由が他にもあるとし、具体例として、自分の活動を支持する有権者名簿の作成を挙げた。

経済誌フォーブスの世界長者番付で首位に立つマスク氏は、自身が立ち上げたトランプ氏を支援するスーパーPAC(特別政治活動委員会)「アメリカPAC」に少なくとも7500万ドル以上を献金。

同PACは、激戦州で有権者の動員を図ることを目指しており、トランプ氏の再選に向けた選挙運動で重要な役割を担っている。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

北朝鮮兵がロシアにいる証拠ある=米国防長官

ワールド

イスラエル軍がガザ攻撃、20人死亡 北部で作戦強化

ワールド

トランプ陣営、英労働党の選挙干渉を批判 調査要求

ワールド

BRICS首脳、ウクライナ・中東紛争を協議 グルー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米大統領選 イスラエルリスク
特集:米大統領選 イスラエルリスク
2024年10月29日号(10/22発売)

イスラエル支持でカマラ・ハリスが失う「イスラム教徒票」が大統領選の勝負を分ける

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が出産後初めて公の場へ...夫フセイン皇太子と仲良くサッカー観戦
  • 3
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはどれ?
  • 4
    リアリストが日本被団協のノーベル平和賞受賞に思う…
  • 5
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 6
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 7
    トルコの古代遺跡に「ペルセウス座流星群」が降り注ぐ
  • 8
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 9
    中国経済が失速しても世界経済の底は抜けない
  • 10
    大谷とジャッジを擁する最強同士が激突するワールド…
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 3
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 4
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 5
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くそ…
  • 6
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 7
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 8
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 9
    裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調…
  • 10
    北朝鮮を訪問したプーチン、金正恩の隣で「ものすご…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 5
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 6
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 7
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 8
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 9
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 10
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中