ニュース速報

ワールド

スイス中銀がマイナス金利据え置き、フランは「過大評価」

2017年12月14日(木)23時13分

 12月14日、スイス国立銀行(中央銀行)は、超緩和的金融政策を維持すると発表し、「大幅に過大評価されている」スイスフランの上昇を抑制するためマイナス金利を継続する意向を示した。写真はロゴ、ベルンで昨年4月撮影(2017年 ロイター/Ruben Sprich)

[ベルン 14日 ロイター] - スイス国立銀行(中央銀行、SNB)は14日、超緩和的金融政策を維持すると発表し、「大幅に過大評価されている」スイスフランの上昇を抑制するためマイナス金利を継続する意向を示した。

主要政策金利は据え置き。中銀預金金利をマイナス0.75%、3カ月物LIBOR誘導目標レンジをマイナス1.25─マイナス0.25%で維持した。ロイターのまとめたアナリスト予想でも据え置きが予想されていた。

フランの対ユーロ相場は今年、8%下落した。

一方、SNBは国内の物価上昇率が2020年第3・四半期に2.1%になるとの見通しを示した。SNBの物価安定目標(2%弱)をやや上回る水準であり、現行の超緩和的金融政策のスケジュールを示唆した格好だ。

ジョルダン総裁は政策正常化について語るのは時期尚早と指摘。記者会見で、フランが過去6カ月で約7%下落しているものの、依然として「過大評価されている」と述べた。

SNBは「最新の金融政策評価以来、フランはユーロに対して一段安となり、もっと最近では、対ドルでも下落した」と指摘。「このようにしてフランの過大評価は縮小しているが、フランは引き続き高い水準にある」との見方を示した。

フラン安により、セーフヘイブンとみなされる通貨が最近妙味を失っていることが示される一方、SNBはフランの動向は「脆弱」であると主張。マイナス金利を維持するとともに、外為市場に介入する意志は引き続き「不可欠」とした。

ユーロ圏では今年、フランス大統領選でマクロン氏が勝利したことで政治的不透明感が後退したのに伴い、ユーロがフランに対して上昇。輸出依存度の高いスイス経済は追い風を受け、第3・四半期の成長率は加速した。

SNBは2017年通期の成長率予想をわずかに引き上げ、1%とした。当初は1%弱としていた。18年については2%前後とした。

今年のインフレ率は0.5%とし、9月時予想の0.4%から上方修正。18年についても、0.4%から引き上げ0.7%とした。19年については1.1%で据え置いた。

クレディ・スイスのエコノミスト、マキシム・ボッテロン氏は「インフレ見通しの上方修正はSNBが政策の正常化に目を向けていることを示す初期のシグナルだ。しかし、中銀は引き続きフランの高バリュエーションに言及しているため、利上げにはさらにある程度のフランの下落が必要になりそうだ」と述べた。

ING銀行のジュリアン・マンソー氏は「新たな2020年のインフレ見通しからみて、中銀は2019年末には欧州中銀(ECB)の利上げ路線に追随し、超緩和政策の正常化への扉を開く可能性が高い」との見方を示した。

*内容とカテゴリーを追加して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中