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アングル:訪中のトランプ氏、貿易不均衡問題で中国を「称賛」
11月9日、訪中したトランプ大統領(中央)は、習主席(右)と中国を手放しで称賛。巨額の対米貿易黒字を増やし続ける同国の能力さえほめそやし、その責任は歴代の米大統領にあるとした。北京で8日撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)
Tony Munroe and Christian Shepherd
[北京 9日 ロイター] - 中国の習近平国家主席が、北京を訪れたトランプ米大統領に破格のもてなしで好印象を与えようとしたなら、それは功を奏したようだ。
トランプ大統領は、習主席と中国を手放しで称賛。巨額の対米貿易黒字を増やし続ける同国の能力さえほめそやし、その責任は歴代の米大統領にあるとした。
貿易や北朝鮮や、米国で問題となっている鎮痛剤オピオイド規制などの問題について議論したという習主席との会談について、トランプ大統領は「素晴らしかった」と説明。ただ、米企業の中国市場へのアクセス緩和や北朝鮮に核兵器開発を放棄させるための圧力強化といったことでは大きな進展は見られなかった。
「あなたに対する感情はとても温かいものです」と、トランプ大統領は習主席の傍らに立ち、こう語った。
習夫妻はその前日、トランプ夫妻を紫禁城に案内し、そこで晩餐会を開くなど、中国を訪れる外国首脳の待遇としては異例の特別扱いでもてなした。
「言った通り、われわれはとても相性が良い。中国と米国のために、われわれには素晴らしいことができると考えている」とトランプ大統領は述べた。
4月に習主席が訪米し、トランプ大統領の別荘で初めて両首脳が顔を合わせてから、そのように良好な関係が生まれた。貿易や北朝鮮問題における大きな違いや、中国が強める主張への西側の懸念は和らいだ。
日本の安倍晋三首相と親しくゴルフ外交を楽しむ一方、トランプ大統領は習主席やロシアのプーチン大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領といった独裁的指導者を称賛する。
スタイルという点において、世界の2大経済大国のリーダーである2人は正反対である。習主席は用意周到で慎重なタイプであり、堅実なイメージをつくり上げている。一方、1年前に米大統領選で逆転勝利を収める以前は不動産王でリアリティーテレビ番組のスターだったトランプ氏は、即興が得意で、ツイッターで自由奔放につぶやき、誇張した発言をすることで知られる。
また2人はそれぞれ、国内においては異なる政治的現実に直面している。習主席は先月、5年に1度開かれる共産党大会でこれまで以上に権力を強固なものとした。一方のトランプ大統領は、支持率は低迷し、大統領選での自身の陣営とロシアとのつながりを巡る捜査が足かせとなっている。とはいえ、米株市場の記録的高水準を自分たちの功績だと大統領と側近らは主張している。
<称賛と影響力>
だがトランプ大統領は、中国ひいては習主席が、台頭する大国として振りかざす強い影響力を認識しているとみられ、最近は同主席を「キング」に例えている。また、自身が抱える最大の世界安保問題に対処するため、北朝鮮に対する中国の影響力が必要だと確信している。
しかし、ご機嫌取りは「諸刃の刃」である。中国は、北朝鮮問題でさらなる行動を求める米国の圧力をかわし、貿易面においては、トランプ政権誕生で不可避と思われていた緊張の高まりを回避したいと考えている。トランプ氏は大統領選挙期間中、貿易慣行によって米国を「レイプ」しているとして中国を非難していた。
「中国は個人的関係を非常に重視する。中国の指導部がトップダウンであることを考えると、習主席が外国のリーダーと非常に仲良く付き合っているのを目にすることは特に重要だ」と、中国のシンクタンク「中国グローバル化研究センター(CCG)」の王輝耀センター長は指摘する。
「良好な雰囲気のなかで、構造的問題に取り組む方がずっとやりやすい」
トランプ大統領と習主席のもっと個人的な交流の一部は、中国のソーシャルメディアで際立った役割を担っていた。そのなかには、トランプ氏の孫娘が「習おじいちゃん」「(習夫人の)彭おばあちゃん」と歌っている動画も含まれている。
なかでも、紫禁城で習主席がトランプ大統領に対し、中国は現在あるどの国よりも長く文化的歴史を保っていると説明している動画は特に人気があった。
「われわれはドラゴンの子孫と呼ばれている」と、習氏はトランプ氏に説明すると、トランプ氏は「それは素晴らしい」と笑顔で応えている。
トランプ大統領は9日の共同記者会見で、習主席のことを「非常に特別な人」とさえ表現し、あまりに熱が入っていたように見えたため、大統領が敬意を表しすぎるのではないかとの質問をティラーソン米国務長官は受けたほどだった。
それに対し同国務長官は「全くそのようには感じなかった」と答えた。
しかしホワイトハウスは、共同会見で両首脳が質問を受けないことを望む中国政府の意向を受け入れた。
習主席は公の場で、トランプ大統領からの個人的称賛に「返礼」はせず、いつものしかめっ面を貫いた。だがそんな習氏も、トランプ氏が貿易赤字を中国のせいにせず、習氏について物事を成し遂げる人物だと改めて語ったときにはほほえんで見せた。
「中国を責めたりしない」と、トランプ大統領は貿易赤字を巡り、こう語った。
「自国の市民のために他国を利用する国を責めることができようか。私は中国を大いに称賛する」
(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)