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アングル:北朝鮮に「丸腰」の欧州ミサイル防衛
9月12日、北朝鮮の長距離弾道ミサイル開発問題では、早ければ来年にもベルリンやパリ、ロンドンといった欧州の主要都市が射程内に入る可能性が指摘されている。だが、現行の欧州ミサイル防衛システムでは迎撃できないと、外交筋や専門家は警告している。写真は欧州ミサイル防衛の一環として昨年運用開始されたルーマニアのイージス・アショアの施設。昨年5月撮影(2017年 ロイター/Inquam Photos)
[ブリュッセル 12日 ロイター] - 北朝鮮の長距離弾道ミサイル開発問題では、早ければ来年にもベルリンやパリ、ロンドンといった欧州の主要都市が射程内に入る可能性が指摘されている。だが、現行の欧州ミサイル防衛システムでは迎撃できないと、外交筋や専門家は警告している。
米政府は、構想から10年以上が経過する欧州ミサイル防衛について、欧州を「ならず者国家」から守るために必要だと繰り返し説明してきた。米当局者がこの言葉を使う際、それらは北朝鮮やイランを指す。
ところが専門家によれば、北大西洋条約機構(NATO)が北朝鮮のミサイルを迎撃するためには、より多くのレーダーと専用の迎撃ミサイルを配備する必要があるという。
「NATOのミサイル防衛システムは、北朝鮮のミサイルを撃ち落とすには(迎撃ミサイルの)射程距離が不十分で、早期警戒レーダー網も不足している」と、英民間研究機関の国際戦略研究所(IISS)のミサイル防衛専門家マイケル・エルマン氏は指摘する。
「北朝鮮のミサイルはロシア上空を通過するが、ロシアにNATOがレーダーを設置することは不可能なため、早期捕捉が難しい」と、エルマン氏は付け加えた。
また、北朝鮮の弾道ミサイルに対応できる射程距離の迎撃ミサイルの配備を試みれば、1987年に米国と当時のソ連との間で結ばれた「中距離核戦力全廃条約(INF)」に違反する恐れもあると軍事専門家らは指摘する。
ロシアは米国主導の欧州ミサイル防衛構想について、真の目的は「ならずもの国家対策」ではなく、ロシアの核戦力を無力化することにあるとして長年反対してきた。
北朝鮮のミサイルに対し有効な防衛手段を持つためにはINFの修正が必要だが、こうした戦略上の懸念を抱くロシアとの再交渉は難しいと軍事専門家らは指摘する。
<防衛システム起動>
北朝鮮の脅威に対するNATOの備えは始まったばかりだ。9月3日に同国が強行した6回目の核実験を受け、NATOの幹部外交官2人は、NATO本部では対北朝鮮防衛をようやく検討し始めたばかりだと、ロイターに明かした。
北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を完成させるのは早くても来年とみられている。だが、別のNATO外交官は、あくまでも憶測と断った上で、米国を威嚇するためにNATO加盟国が北朝鮮の標的となりかねないと指摘する。
米国は昨年5月、ルーマニアで陸上型イージス(イージス・アショア)の運用を開始し、イランからの脅威を想定した総額8億ドル(880億円)の欧州ミサイル防衛システムを起動した。欧州ミサイル防衛は、東欧から地中海まで配備された迎撃ミサイルとレーダー網からなり、ドイツにあるNATO基地が指揮を執っている。
ポーランドの迎撃ミサイル施設が2018年後半に完成すれば、グリーンランドからポルトガル領アゾレス諸島までの広範囲をカバーできるようになる。
だが北朝鮮の弾道ミサイルを撃ち落とすには、開発中の新型迎撃ミサイル「ブロック2」が必要だ。このミサイルは、弾道弾をより早期に高い高度で迎撃できる性能を持つ。
だが2018年に完成予定のブロック2は、米アラスカ州やカリフォルニア州、日本や韓国への配備が欧州より優先される可能性が高いと、前出のエルマン氏は話す。同氏は「同盟各国が競ってブロック2を求めることになるだろう」と予想している。
(Robin Emmott記者 翻訳:新倉由久 編集:山口香子)