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焦点:米シリア攻撃、アサド政権には「軽いお仕置き」程度か
4月9日、米国のシリア攻撃により、アサド大統領(写真)の戦術はやや慎重化するかもしれないが、反体制派の一掃に向けた同盟国との軍事作戦を弱めることはなさそうだ。ダマスカスで撮影。SANA6日提供(2017年 ロイター/SANA/Handout via REUTERS)
[ベイルート 9日 ロイター] - トランプ米政権が6日、シリアの空軍基地を巡航ミサイルのトマホークで攻撃した。これによりアサド大統領の戦術はやや慎重化するかもしれないが、反体制派の一掃に向けた同盟国との軍事作戦を弱めることはなさそうだ。
シリア内戦が始まって6年、米政権がアサド政権を直接攻撃したのはこれが初めてだ。
しかしトマホークによる一回の攻撃だけではあまりにも限定的で、同政権と同盟国は「米政府はこれまで通り、アサド氏を打倒できるほどの強力な行動には及び腰だ」という確信を深めるだけだろう。
シリアについての著書があるトリニティー大学の中東史教授、デービッド・レシュ氏は「アサド氏はこれで、化学兵器の使用に関してレッドライン(超えてはならない一線)があることを認識した。しかし彼は軽いお仕置き程度にしか考えていないだろうと私は思う」と述べた。
「アサド氏は微調整を迫られるが、ロシアが介入して以来採ってきた軍事アプローチを根本的に変える必要はない。米国の行動がこの程度で終わるなら、彼らはさほど傷ついていないと私は確信している」とレシュ氏は続けた。
アサド大統領は米軍の攻撃後も挑戦的な態度を崩さず、「テロリスト」を一掃する努力を継続すると誓った。
アサド政権の同盟国であるロシア、イラン、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの共同中央司令部は米軍の攻撃を受け、政権への支援をさらに強化するまでだ、と表明した。
米軍の攻撃後も、アサド政権による空爆は続いた。8日にはイドリブ県で一回の攻撃だけで18人が死亡したと報じられている。米軍に攻撃されたホムス郊外のシャイラト空軍基地も一部稼働を再開し、戦闘機が離陸した。
アサド政権の同盟軍高官によると、米政府が攻撃について事前にロシアに警告し、それを受けて警戒したシリア政権側は、攻撃前に同空軍基地を空にしていた。
別の同盟軍高官は、米軍の攻撃はすぐに終わり、「限定的」だったと言う。高官は、トランプ大統領にとってアサド氏の打倒は優先課題ではないように見受けられ、「米国はまだ明確なシリア政策を持っていない」と述べた。
3人目の同盟軍高官は、攻撃によってトランプ氏が予測不能な行動を取ることは分かったが、米政府の姿勢に大きな変化はないと指摘。「米国の戦略は転換したのか?彼らはロシアと本格的に事を荒立てたいのか?いや、戦略転換があったとは思えない」と語った。
<反体制派は期待>
攻撃実施後、トランプ氏はアサド氏に対して「何らか行動を起こす」と厳しい姿勢を示しているが、具体的な行動には言及していない。米国のニッキー・ヘイリー国連大使は8日、アサド大統領退陣が優先課題だと述べ、これまでの方針を転換した。
ティラーソン米国務長官は同日、最優先課題は過激派組織イスラム国(IS)の打倒だと述べており、アサド政権に対してより忍耐強い姿勢を示しているようだ。
オバマ前政権の怠慢を批判してきたシリアの反体制派は、米国がこれを皮切りにアサド政権への攻撃姿勢を強めてほしいと願っている。反体制派グループは7日、米国の「責任」はミサイル攻撃だけでは終わらないと述べた。
反体制派を強制的に郊外へと撤退させるアサド政権の措置は、8日もロシア軍の監視下で計画通り実行された。
シリア国営テレビのインタビューを受けたロシアの軍司令官は、米軍の攻撃によって実行が揺らぐことはないと述べた。
(Tom Perry記者 Laila Bassam記者)