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アングル:米政府の武装無人機輸出方針、防衛業界は慎重な歓迎

2015年02月19日(木)14時00分

 2月19日、米国防省が策定した軍事・商業用無人飛行機(ドローン)の輸出に関する基本方針について、米防衛機器メーカーは慎重ながらも歓迎する姿勢を示した。写真は、飛行する無人機、2014年撮影(2015年 ロイター/Umit Bektas)

[ワシントン 18日 ロイター] - 米国防省が17日、軍事・商業用無人飛行機(ドローン)の輸出に関する基本方針を策定したことを受け、米防衛機器メーカーは18日、機器の売上高が増加するとともに、米軍が将来、同盟国との軍事作戦が行いやすくなるだろうと述べ、この方針を慎重ながらも歓迎する姿勢を示した。

米国務省によると、今回の基本方針では致死性のある兵器を備えたドローンの輸出には厳格な条件が適用される。具体的には売却は政府プログラムを通じて実行することや、買い手の国は自国で使用し転売しないと請け合うことなどが義務付けられた。また買い手側は国際法を順守し、自国民に対しての違法な監視活動ないし取り締まりに使ってはならない。

武装ドローンは、アフガニスタンやイラク、イエメンにおける米国の軍事作戦で重要な役割を果たしており、米国の同盟国からは需要が高まりつつある。米国内では、ノースロップ・グラマンやテクストロン、非上場のゼネラル・アトミックスといったドローン製造業者が政府に輸出規制緩和を要請。こうした中で2年間の検討を経て、基本方針がまとめられた。今後は他国と協力して国際的な基準も設けていく方針だ。

米政府の複数の当局者は、新たな方針の下で米国と最も緊密な同盟関係にある諸国は武装ドローンの購入が容易になるが、厳しい条件は維持されると説明した。

これまでのところ、米国の武装ドローン購入が認められているのは英国のみ。ただし、フランスとイタリアは、ゼネラル・アトミックス製の「リーパー」の偵察仕様機を導入している。

イタリアがリーパーへの兵器搭載を要請し、トルコから武装ドローン購入希望があることについて、国務省当局者は、直接の言及は避けながらも、こうした要求は新方針に照らして検討されると述べた。

新方針では、最低500キログラムの搭載重量があって航続距離が少なくとも300キロメートルに達する「カテゴリーI」と呼ばれる最も大型のドローンは引き続き売却禁止が前提で、「異例な場合」に限り輸出が認められる。

同当局者は、武装ドローンの輸出可能な国の正式なリストは存在せず、すべての売却要請は個々の案件ごとに判断されるとしている。

<防衛業界に追い風か>

武装ドローンの輸出は、搭載兵器の「ヘルファイア」ミサイルを製造するロッキード・マーチンや、センサーとシミュレーターを手掛けるL3コミュニケーションズ、レイセオンなどにも追い風となる可能性がある。

ロッキード・マーチンのマリリン・ヒューソン最高経営責任者(CEO)は「良いことだ。世界中で多数の国がこういった能力を欲しがっている。ウィンウィン(ともに利益を得る)だと思う」と述べた。同社は非上場のゼネラル・アトミックスが製造したドローン「プレデター」や「リーパー」に搭載する「ヘルファイアー」ミサイルを製造している。

ゼネラル・アトミックスもこの動きを歓迎した。

一方、ノースロップ・グラマンは、まず最初にこの方針を検討する必要があるとしてコメントを控えた。

米航空宇宙産業協会(AIA)のバイスプレジデント、レミー・ネイサン氏は「物事は細部が難しい」と述べ、政策の機密詳細についてのブリーフィングを求めたことを明らかにした。

*情報を追加して再送します。

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