アングル:トランプ関税発表に身構える市場、不確実性晴れぬ可能性も

トランプ米大統領が相互関税や分野別関税に関する詳細を公表するとした4月2日が迫ってきた。ニューヨーク所見取引所で2022年11月撮影(2025年 ロイター/Brendan McDermid)
[ニューヨーク 28日 ロイター] - トランプ米大統領が相互関税や分野別関税に関する詳細を公表するとした4月2日が迫ってきた。しかし、今年の金融市場に大きく影を落としてきた不確実性がこの日で完全に払拭されると予想する投資家はほとんどいない。
トランプ氏の関税政策を巡る懸念からS&P総合500種は3月に一時、最高値と比べて10%下落した。2025年に入ってから約3%下落し、第1・四半期の下落率としては22年以来、3年ぶりの大きさとなりそうだ。‘‘‘‘
シーバート・ファイナンシャルのマーク・マレク最高投資責任者(CIO)は「私は永遠の強気派だが、今から4月第1週、そして決算発表シーズンの始まりにかけて株価は上振れよりも下振れの可能性が大きいと思っている」と語った。
4月2日には実際の関税率や、どの国、どの分野が標的にされ、相手国が報復に動くかどうか次第で株価が激しく変動すると予想される。
ただステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのチーフ投資ストラテジスト、マイケル・アローン氏は「4月2日以降もボラティリティーが高まる余地がある」と警告した。
エドワード・ジョーンズのシニア投資ストラテジスト、アンジェロ・クーカファス氏は、4月2日の関税計画発表は「1日だけで消化されるイベント」になりそうにはないと予想。「重要な節目だが、2日が終わった段階でも全ての不確実性が解消されず、尾を引きかねない」と付け加えた。
<上下双方向にリスク>
エバーコアISIのシニアストラテジスト、マシュー・アクス氏は、4月2日の市場の反応は将来の関税、とりわけ分野別の関税が発動されるタイミングと、相互関税に相手国がどれだけ素早く対抗するかにかなり左右されるとの見方を示した。
アクス氏は「他国が報復に動けば(関税引き上げ合戦が)エスカレートするリスクを生み出し、安心感に水を差す恐れがある」と話す。
バークレイズのストラテジストチームは26日、S&P総合500種の今年の目標値を6600から5900へ引き下げた。関税によって米経済活動が大幅に鈍化し、企業収益が打撃を受けるとの想定に基づいている。
S&P総合500種構成企業の25年の1株当たり利益見通しも271ドルから262ドルに下方修正し、一般消費財分野が最も弱くなると見込んだ。
ただ、リスクは下値方向だけではない。公表される関税の詳細が市場の想定していた最悪ケースより穏当な内容だった場合は、安値拾いの買いが入ってもおかしくないからだ。
ハリス・フィナンシャル・グループのマネジングパートナー、ジェイミー・コックス氏は「株式市場にとって下値方向のサプライズが出てくるとは思わない」との見解を示し、新たな下落局面は買い場と見なす考えを明かした。
トランプ氏は4月2日で関税政策に一区切りをつけ、軸足を減税など市場に追い風となる政策に移行させるのではないかとの期待感も出ている。
ダコタ・ウエルスのシニア・ポートフォリオマネジャー、ロバート・パブリク氏は「関税から完全に手を引くことはなくとも、税制の話題がより強調されるだろう。それが私の望む展開だ」と述べた。
それでも関税を巡る懸念を背景に3月の消費者信頼感を4年余りぶりの低水準に落ち込み、投資家の間では景気後退やインフレに対する不安が強まっている。
シーバートのマレク氏は「このような消費者信頼感の動きが(実体経済の)どこかにマイナスの影響を及ぼさなかったためしはない」と語る。
オックスフォード・エコノミクスの首席アナリスト、ジョン・カナバン氏は、最近の株式市場を覆う不安感は主として関税が米経済の勢いを著しく弱めるのではないかとの見方に基づいていると分析し、ある程度の弱気地合いは第2・四半期まで継続する可能性があると見ている。
ステート・ストリートのアローン氏は「状況がより明確になれば株価上昇余地が出てくる。(しかし)そうした明確性が得られるのかどうか依然として懐疑的だ。期待はしているが、本当にそうなるかどうか見定めていく」と述べた。