アングル:NYのオフィス物件投資復活、出社再開で高まる需要期待

3月7日、世界最大の資産運用会社の米ブラックストーンのような機関投資家や個人富裕層が今、ニューヨークのオフィス用不動産物件を物色しつつある。写真はニューヨークのJPモルガン・チェースのオフィス前で2013年10月撮影(2025年 ロイター/Eric Thayer)
Saeed Azhar Matt Tracy Carolina Mandl
[ニューヨーク 7日 ロイター] - 世界最大の資産運用会社の米ブラックストーンのような機関投資家や個人富裕層が今、ニューヨークのオフィス用不動産物件を物色しつつある。企業が従業員に再び出社を求めるようになり、新型コロナウイルスのパンデミック以降しばらく低迷が続いた商業不動産市場の回復が始まっているからだ。
不動産投資家やコンサルタント、銀行関係者らの話によると、ニューヨークの再優良オフィス物件に対する需要は増大が続き、より多くの取引が成立している。アマゾン・ドット・コムがスペースを探したり、ボストンの不動産投資信託(REIT)のBXPが複数のテナントとビル新築を協議したり、ブラックストーンが商業不動産セクターへの楽観姿勢を強めたりしているのは、いずれも明るい兆しと言える。
ブラックストーンのジョナサン・グレイ社長は4日の会合で、ニューヨークとサンランシスコのオフィス物件は魅力的な価値を提供していると説明。「ニューヨークでは金融サービス企業が急成長し、もはや新しいビルがない。サンフランシスコは物件の値下がりが激しく、一部では75%に達したが、人工知能(AI)と技術革新の拠点がここにある」と語った。
近年、ブラックストーンはオフィス物件への投資を劇的に縮小してきた。2007年時点で60%超だった不動産ポートフォリオに占めるオフィス物件の比率は現在2%弱に過ぎない。
複数のコンサルタントは、リース条件が改善し、テナントの動きがより活発化したことで、オフィス物件の取得が増えていると述べた。ブラックストーンは、マンハッタン6番街にあるオフィスビルの持ち分を大幅に購入することを検討中だ。
金利低下もオフィス需要押し上げにつながっているもようだ。BXPのオーウェン・D・トーマス会長兼最高経営責任者(CEO)は「世界は対面で仕事をする流れに戻りつつあることに疑問の余地はない。不動産は金利に左右される資産で、それも追い風だ」と指摘した。
BXPはニューヨーク中心部マンハッタンのミッドタウンに46階建てビルの建設を進めており、4-5のアンカーテナントと協議しているという。
このビルの建設予定地はJPモルガン・チェースの新本社近くにある。1万4000人が働くスペースを備え、年末までに完成する。
JLLリサーチはノートで、アマゾン・ドット・コムやJPモルガンといった米国最大級のテナントが週5日の出勤体制に切り替えている中で、企業はオフィススペース不足に直面する可能性があると記した。
事情に詳しい関係者によると、アマゾンはニューヨークでさらに多くのスペース確保を模索しているという。
<収益性が改善>
富豪のケン・グリフィン氏は、ミッドタウンにある自身が率いるヘッジファンドのシタデルとマーケットメーカーのシタデル・セキュリティーズのオフィス統合を約3年前に決めた際に、十分なスペースを見つけ出せず、新ビルの建設を選択した。当時はまだ週5日出社の波が発生する前だった。
グリフィン氏が他の投資家と共同でマンハッタンのパークアベニューに建設しようとしているのは、6000人が働ける62階建てビル。シタデルとシタデル・セキュリティーズがアンカーテナントとして入り、2032年までに完成する。
商業不動産市場の見通しは、収益性の指標とされるキャップレートに反映される。パンデミック後はキャップレートが急上昇(不動産価格が下落)し、投資家にとって購入の妙味は薄れた。
しかし、調査会社トレップの分析によると、キャップレートは24年第1・四半期に6.99%とピークに達した後、同年末には5.77%に低下した。不動産コンサルタントのCBREが調査した米国の商業不動産販売も23年に半減したものの、24年は9%増加した。
パンデミック時のオフィス閉鎖とリモートワーク推進によって急上昇した空室率も、足元では下がってきた。
商業不動産アドバイザーのアビソン・ヤングが調べたマンハッタンの今年1月のオフィス稼働率はパンデミック前比で79.9%、主要都市でも同66.9%まで戻している。
ゴールドマン・サックスのプライベートバンキング・融資・預金グローバル責任者を務めるニシ・ソマイヤ氏は、個人富裕層も最優良オフィス物件向け投資に再び参入し始めたと話す。
ソマイヤ氏は「当社のプライベートバンクの商業不動産向け融資は拡大しつつある。このセクターに多大な需要と商機への自信があることを物語っている」と解説した。