焦点:日銀、食品高騰の物価予想への影響注視 指標見極め5月に利上げ議論も

3月7日、コメなど食料の価格高騰が続く中、日銀では期待インフレ率や基調的な物価上昇率への影響に注目が高まっている。都内の日銀本店で1月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Takahiko Wada Leika Kihara
[東京 7日 ロイター] - コメなど食料の価格高騰が続く中、日銀では期待インフレ率や基調的な物価上昇率への影響に注目が高まっている。1月の利上げの影響を見極める観点から、3月18―19日の金融政策決定会合での利上げには慎重な声があるが、3月会合後に発表される日銀短観や生活意識アンケート調査などのデータ次第では、4月30日―5月1日の決定会合での追加利上げの議論につながる可能性がある。
日銀が1月の展望リポートで物価見通しを引き上げた後も、物価は上振れ気味で推移している。上振れの主因であるコメや生鮮食品、食料加工品の価格上昇が長引いており、日銀内では、基調的な物価や期待インフレへの影響はゼロではないとの指摘が出ている。
内田真一副総裁は5日の記者会見で、物価の基調を考える上で「一番重要なのはもちろん賃金」と述べる一方、購入頻度の多い品目の価格上昇が「物価予想に及ぼし得る影響は十分注視していかなければいけない」と話した。日銀内ではこの先の金融政策運営に関連して、こうした食品価格の上昇が一時的なものか、期待インフレ率を押し上げる方向に作用するのかを見極めたいとの指摘もある。
3月会合後には3月日銀短観や生活意識アンケート調査、4月の東京都区部消費者物価などが公表される。一連の指標で期待インフレや基調的な物価の押し上げが確認できれば利上げを後押しする可能性がある。
3月の決定会合前には、春闘を巡る連合の1次集計が発表される。春闘の1次集計は、5月会合で改めて議論する展望リポートの物価見通しを引き上げる要因となる可能性がある。5月会合の展望リポートでは2027年度の経済、物価見通しを初めて示す。
一方、日銀ではトランプ米政権の政策の動向など、米国経済を巡る不確実性が1月会合時点よりも高まっているとの声もある。トランプ米政権の関税政策は日本経済にとっても下振れリスクとみられており、早期の利上げに慎重な見方もある。5月1日の利上げなら、四半期に一度の利上げとなり、「日銀が利上げを急いでいる」との印象を市場に与えかねず、データの蓄積をもう少し待つべきだとの声も聞かれている。
5月に追加利上げを議論するか、さらに慎重に判断するかは、物価動向だけでなく世界経済や金融市場の動向などにも左右される。
3月会合に関しては、春闘の1次集計の結果のみで連続利上げに動くことにはならないのではないか、との声が複数出ている。日銀はこれまでの利上げの影響について見極めたいとしており、内田副総裁は5日の会見で今後の利上げペースについて「毎回(の会合で)利上げしていくペースではない」と述べている。