アングル:中国当局、人民元安圧力で資本流出規制を強化
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2月26日、中国当局は、人民元が下げ圧力に見舞われる中で、海外投資に対する監視強化を含めた新たな資本流出規制措置を打ち出している。写真は人民元紙幣と中国旗のイメージ。2019年11月撮影(2025年 ロイター/Florence Lo)
[上海 26日 ロイター] - 中国当局は、人民元が下げ圧力に見舞われる中で、海外投資に対する監視強化を含めた新たな資本流出規制措置を打ち出している。
人民元は昨年11月の米大統領選以降、対ドルで2.2%下落した。トランプ米大統領が関税をちらつかせて米中の緊張が高まり、外国の対中投資意欲が後退していることが背景にある。
こうした状況を受けてブルームバーグは今週、中国当局が国内企業による海外投資や香港での株式売り出しを通じた資金調達への監視を強めていると複数の関係者の話として報じた。
一方で公式統計に基づくと、中国の商業銀行による今年1月の顧客向け外貨売却額は昨年7月以来の大きさとなり、外貨需要が増大している様子が分かる。中国国内の家計と企業がドルを人民元に転換しようとする意欲の度合いを示す指標は、ここ数カ月で最低の水準に沈んだ。
ゴールドマン・サックスのエコノミスト、シンカン・チェン氏は、経常収支勘定は1月に相当な資金流出があったことを示していると指摘した。
人民元の魅力を低下させている主因は、米10年国債利回り(長期金利)上昇と中国10年国債利回り低下に伴う金利差拡大だ。1月の米中金利差は過去最大に膨らんだ。
RBCキャピタル・マーケッツのアジアFX戦略を統括するアルビン・タン氏は「内需の弱さと低金利は人民元にとって大きな構造的逆風をもたらしている」と述べた。
中国国内のドル供給も細っている。企業が割安な人民元建てでの借り入れを拡大しているためで、1月の外貨建てローン残高は13年超ぶりの低水準に落ち込んだ。一方、外貨預金は2023年4月以来の高水準に達している。
INGのチーフ中華圏エコノミスト、リン・ソン氏は年初時点の外貨預金増加は季節的な現象だとしながらも「投資家の(人民元に対する)信頼感が持続的に上向かない限り、あるいは上向くまで、外貨預金は今年を通じて増えていきそうだ」と予想した。
中国人民銀行(中央銀行)が毎日公表する基準値は昨年11月半ば以降、市場予想に比べて高めに設定されている。これは当局が人民元安を好ましく思っていない表れだと受け止められている。
主要国有銀行もドルの売却を続け、人民元をてこ入れしてきた。こうした動きや、中国が人民元の急落を許容しないだろうとの見方が、今のところフォワード市場での人民元の支えになっている。