焦点:車関税の影響注視、GDP下押し試算も 成長経済移行へ正念場

2月17日、2024年10―12月期実質国内総生産(GDP)は設備投資がけん引する形でプラス成長となり、企業の投資意欲を裏付けた。ただ、対米輸出自動車に追加関税が課されるとGDPが下押しされるとの試算もあり、先行きは暗雲が漂う。2017年3月、都内で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Kentaro Sugiyama Takaya Yamaguchi
[東京 17日 ロイター] - 2024年10―12月期実質国内総生産(GDP)は設備投資がけん引する形でプラス成長となり、企業の投資意欲を裏付けた。ただ、対米輸出自動車に追加関税が課されるとGDPが下押しされるとの試算もあり、先行きは暗雲が漂う。石破政権が目指す成長型経済への移行は今後、正念場を迎える。
<節目迎えた名目値>
「一つの節目を迎えた」。内閣府幹部の1人は、プラス成長に自信をのぞかせる。10―12月期実質GDPは、年率2.8%増と3四半期連続のプラスとなった。民間調査機関を対象とするロイターの事前調査では、年率プラス1%になると予想されていた。
名目GDPは、24年暦年で初めて600兆円を超えた。バブル経済の余波が残る92年に500兆円を超えてから、30年以上も大台を更新できていなかった。
財界からは「設備投資への意欲は引き続き旺盛。積極的な投資が生産性の向上をもたらし、さらなる業績改善につながるというマクロ的な好循環のトレンドは当面、変わらない」との声が挙がる。
<不透明な対米投資の行方>
しかし、先行きは楽観できない。対米戦略を巡り、石破茂首相は1兆ドルへの投資引き上げを表明したが、GDPに対しマイナス要因になるとの指摘がある。
対米投資について政府関係者の1人は「すでに民間で計画されていた投資案件を積み上げて、トランプ大統領との交渉カードとした」と語る。対米投資が加速しても「日本の産業空洞化にはつながらない」と、経済産業省の関係者は言う。
一方、大和証券の末広徹チーフエコノミストは「対米投資で企業収益が増え、日本の賃金に反映されて個人消費が押し上げられるという波及経路も考えられなくはないが、それは最後まで分からない」指摘する。国内での設備投資や輸出の伸び悩みなどの「マイナス影響が先に出てくる」という。製造業の国内回帰の流れにも影響しそうだ。
<車関税なら「相応の悪影響」>
自動車関税の影響も見逃せない。トランプ大統領は14日、米国に輸入される自動車に関税を課すことを検討していると表明。対象となる国や関税率への言及はなかったが、「4月2日ごろから」としている。
自動車への関税が25%上乗せされる場合、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストの試算では、日本のGDPは0.2%程度減少する可能性がある。「日本の潜在成長率が0%台半ば程度と考えられる中、自動車関税は相応の悪影響」を及ぼすと、木内氏は指摘する。
物価の高止まりなどにより実質賃金が明確なプラス基調に転じるにはなお時間がかかりそうで、「消費がけん引する経済成長は見込みにくい」(民間シンクタンク)。向こう半年にかけての内需は設備投資が頼みの綱との声もある中、活発な企業活動を維持できるかは成長型経済への移行を左右しそうだ。