ニュース速報
ビジネス

2024年市場予測の誤算、AIブームで米国主導の株高継続

2024年12月26日(木)11時37分

 12月25日、2024年の初めに多くの投資家は、世界的な株高が失速し、米国の金利が急速に引き下げられて国債価格が上昇し、ドルが軟化、新興市場の通貨が強くなると予想していたが、そのコンセンサスは完全に覆された。写真はボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボで昨年12月撮影(2024 ロイター/Dado Ruvic)

Naomi Rovnick Dhara Ranasinghe Rodrigo Campos

[ロンドン 23日 ロイター] - 2024年の初めに多くの投資家は、世界的な株高が失速し、米国の金利が急速に引き下げられて国債価格が上昇し、ドルが軟化、新興市場の通貨が強くなると予想していたが、そのコンセンサスは完全に覆された。

地政学的リスクや一部先進国の経済的課題にも関わらず、MSCI全世界株式指数は2年連続の上昇となる見通し。

これは主に人工知能(AI)ブームと堅調な経済成長による米国への資金集中が要因。ドルは7%上昇し、米株価も大幅高となり、トランプ大統領の再選も追い風となった。

暗号通貨ビットコインも年初から128%上昇した。しかし、米国への依存度が高まる中、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ幅の縮小示唆や軟調な雇用統計、日本の利上げなどで市場は揺さぶられ、8月には短期間の暴落も経験した。

さらに、トランプ大統領の関税によるインフレ懸念や巨額の政府債務による国債市場への影響も不安材料となっている。米国経済の動向が世界市場を大きく左右する状況となっている。

昨年大幅に上昇したS&P500株価指数は、年初から24%上昇している。エヌビディアは172%上昇し、電気自動車(EV)メーカー、テスラは69%上昇した。

シュローダーズによると、いわゆるマグニフィセント・セブンと呼ばれる米国のハイテク株は、MSCIの世界株指数の約5分の1を占めており、これらの企業の業績やAI技術が期待外れだった場合に市場に与える影響は大きい。

ユーロは対ドルで約5.5%下落し、欧州株は米国株との比較で過去25年間で最もパフォーマンスが悪化した。

欧州中央銀行(ECB)は4回利下げを実施、25年には欧州経済が上向くとの見方もある。投資家が分散投資先を見つけるのに苦慮する中、金は今年27%上昇した。

中国株は当局が刺激策を打ち出す姿勢を示したことから9月の1週間で16%近く上昇した。その後は何度も週間ベースで下落した。24年に中国にしがみついた投資家は、年間14.5%の上昇で報われたが、多くの投資家は、当局が直接行動を起こすまで短期的な好不況のサイクルが続き、欧州やアジアの市場を混乱させると予想している。

米10年債利回りは今年約60ベーシスポイント(bp)上昇、英10年債利回りは100bp上昇、独連邦債10年物利回りは16bp上昇した。日本の10年債利回りは45bp上昇し、03年以来の大幅上昇となった。

トランプ次期米大統領の政策がFRBの政策にどのような影響を与えるかが不透明となる中、債券市場にとって来年は厳しい年になる可能性がある。先月のフランス国債市場の混乱は、いわゆる債券自警団が過剰な借り入れを行った政府を罰する用意があることを示した。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

グアテマラ、トランプ氏との関係構築へ 強制送還受け

ワールド

米が関係改善望むなら応じる用意、次期政権の出方次第

ワールド

ガザで報道車両に空爆、イスラエルは戦闘員標的と説明

ワールド

台湾総統府、中国との有事想定した初の机上演習
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシアの都市カザンを自爆攻撃
  • 4
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 5
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 6
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命を…
  • 7
    「とても残念」な日本...クリスマスツリーに「星」を…
  • 8
    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …
  • 9
    日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落
  • 10
    滑走路でロシアの戦闘機「Su-30」が大炎上...走り去…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 7
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 8
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 9
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 10
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中