焦点:今年は「債券の年」、世界の債券ファンドへの資金流入が過去最高に
12月17日、世界の債券ファンドは12月半ば時点で年初来の資金流入が6000億ドルの大台に乗り、通年で過去最高を更新する見通しだ。写真は米ドルとユーロ紙幣。2022年7月撮影(2024年 ロイター/Dado Ruvic)
Harry Robertson
[ロンドン 17日 ロイター] - 世界の債券ファンドは12月半ば時点で年初来の資金流入が6000億ドルの大台に乗り、通年で過去最高を更新する見通しだ。先行きが不透明な2025年の幕開けを控え、利回りが数十年ぶりの高水準となった債券が資金を引き寄せた形だ。
インフレが鈍化して中銀はついに利下げが可能になり、投資家は利回りを相対的に高い水準で確定しようと債券に投資。その結果、22年に2500億ドルの資金流出だった債券ファンドは一気に流入に転じ、24年は正に「債券の年」となった。
ブラックロックでEMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)iShares債券戦略部門を率いるバシリキ・パチャトゥリディ氏は「ポイントは収益性にある。債券が再び収益性を持つのを目の当たりしている。このような利回り水準はほぼ20年ぶりだ」と話した。
「ICE BofAグローバル債券指数」の今年のリターンは約2%と平均的だが、昨年末時点の利回りは4.5%超と2008年以来の高水準だった。
調査会社EPFRによると、今月中旬時点で先進国および新興国の債券ファンドへの資金流入額は計6170億ドルに達しており、24年通年では21年の5000億ドルを上回って史上最高となる見通しだ。
一方、株式には6700億ドルが流入し、欧米の主要株価指数は最高値を更新。また利回りが高く低リスクのマネーマーケットファンド(MMF)は最も好調で、流入額が1兆ドルを超えている。
<社債に引き合い>
特に引き合いが強いのは、同年限の国債よりも利回りが高い社債。企業が中銀の利上げをしのいだことで社債市場は好調に推移。ICE BofAグローバル社債指数は国債との利回り差が07年の金融危機以前以来の水準まで縮小している。
HSBCプライベートバンクのグローバル最高投資責任者、ウィレム・セルス氏によると「数年前の金利上昇開始に先立って多くの企業は長期の資金調達を終えていた。そのため借入コストの上昇による影響は大方の予想ほど甚大ではなかった。しかも多くの企業は保有する手持ちの現金からより多くの収益を上げていた」という。
<パッシブ運用を選好>
投資家がパッシブ運用の上場投資信託(ETF)を選好しているのは明白だ。モーニングスター・ダイレクトのデータによると同ETFは今年11月末までの資金流入が3500億ドルと記録的な水準で、通年で過去最高を更新しそうだ。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのマーティン・エームケ教授(金融額)は「ETFは以前なら取引が難しかった多くの金融資産、例えば債券へのアクセスを投資家に提供してくれる。例えば社債は一般的に流動性が低いことで知られるが、ETFを使えば非常に流動性の高い形でこの市場に簡単にアクセスできる」とETFの利点を強調した。
この恩恵を受けたのがパッシブ型ファンドの2大プレイヤーであるブラックロックとバンガードだ。モーニングスター・ダイレクトの推計によると、ブラックロックのiShares債券ETFには今年1月から10月末までに1110億ドルが流入。バンガードの債券ファンドの流入は推計1200億ドルで、その大半をETFなどのインデックス部門が占めた。
伝統的にアクティブ運用で知られるPIMCOもこの1年好調だった。モーニングスターによると、債券ファンドは22年に約800億ドルの流出だったが、今年は約460億ドルの流入となっている。
<今後は流入鈍化も>
一方、25年は債券ファンドへの資金流入が鈍化する要因がいくつか予想されている。トランプ米次期大統領による減税や規制緩和政策が米株式市場を押し上げ、株式への資金流入を急増させており、債券の魅力が相対的に低下しているからだ。
EPFRとTDセキュリティーズのデータによると、トランプ氏が今年11月5日に米大統領選で勝利した後の4週間で米株式ファンドに1170億ドルが流入した。これは世界の債券への流入額270億ドルの4倍超に上る。
一方、投資家は社債については今年が好調だっただけに、一段の相場上昇(利回り低下)には懐疑的だ。SEBでグローバル資産配分責任者を務めるカール・ハマー氏は「(国債との)スプレッドがこれ以上大幅に縮小するとは考えにくいし、利回りが今の水準よりも大幅に低下するとも思えない」と述べた。
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