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アングル:米税制改革で不安抱えるPE、利払い控除に上限設定
12月21日、米企業の大半は法人税率の大幅な引き下げを柱とする米税制改革法案を歓迎しているが、転売目的で企業を買収するプライベートエクイティ(PE)会社は不安を抱いている。写真は米ニューヨークで2016年12月撮影(2017年 ロイター/Andrew Kelly)
[21日 ロイター] - 米企業の大半は法人税率の大幅な引き下げを柱とする米税制改革法案を歓迎しているが、転売目的で企業を買収するプライベートエクイティ(PE)会社は不安を抱いている。税制改革で利払い控除に上限が設定され、借り入れによる買収が難しくなり、こうした手法では利益を確保しにくくなるためだ。
これまで企業の利払い控除に制限は設けられていなかった。しかし税制改革により、今後4年間は年間の利払い・税・償却前利益(EBITDA)の30%が控除の上限となる。2021年以降は締め付けが一段と厳しくなり、上限が年間の利払い・税引き前利益(EBIT)の30%となる。
PEコンサルタント会社トレーコーブ・キャピタル・パートナーズのデービッド・ファン最高経営責任者(CEO)は「過去50年間認められていたことができなくなる。劇的な変化だ。実際のところ、企業買収ビジネスは借り入れによる効果がなければ拡大しなかっただろう」と述べた。
税制改革法案を巡ってはブラックストーン
S&Pグローバル・レーティングスの試算によると、負債額がEBITDAの5倍以上の企業の70%は利払い控除への上限設定で悪影響を受ける。またムーディーズ・インベスターズ・サービスによると、買収先企業の資産や将来のキャッシュフローを担保に資金を調達して企業買収を行うレバレッジドバイアウト(LBO)では、全体の3分の1程度が税制改革でマイナスの影響を受けるという。
トムソン・ロイターのデータによると、負債がEBITDAの5倍程度に達している企業には、医療情報会社ウェブMDヘルス
ウェブMDを保有する米投資会社KKR
ムーディーズは先週、税制改革で法人税率は下がるが、利払い控除の上限設定で負債の大きい企業を手放す動きが加速するとの見通しを示した。つまり小売り大手トイザラスのように多額の負債を抱え、PEに保有されている企業の破綻が早まる可能性があり、避けがたくなるということだ。
ムーディーズのアナリストはノートで「格付けの低い発行体の債務不履行が今後増えるだろう」と予測した。
ただ、税制改革は30%の上限を超える利払いについて、過去数年の控除に応じて一定の範囲内で追加の控除が認められ、企業にある程度の柔軟性も与えている。
また法人税率が35%から21%に引き下げられるほか、PEのマネジャーが成功報酬として受け取る「キャリードインタレスト」への優遇税制の廃止も見送られたことから、業界団体の米国投資協議会(AIC)は平静さを保っている。
AICのマイク・ソマーズCEOは「差し引きすれば税制改革はPEにとってプラスだ。PE業界は長期的な投資を続け、米経済を成長させることができる」と述べた。
(Joshua Franklin記者)