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ECBが経済見通し上方修正、緩和継続強調 指針変更討議せず
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12月14日、ECBが超緩和的な政策姿勢を維持した。写真は記者会見に臨むドラギ総裁。フランクフルトで同日撮影(2017年 ロイター/Ralph Orlowski)
[フランクフルト 14日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は14日、域内の経済成長およびインフレ見通しを上方修正するとともに、必要なかぎり金融緩和を行う方針を維持した。
理事会では主要政策金利をゼロ%、中銀預金金利をマイナス0.4%にそれぞれ据え置いた。いずれも市場の予想通り。債券買い入れを最低でも来年9月末まで続けるほか、成長・インフレ動向を下支えするため、その後も長く債券償還で得られた資金を再投資し続けると強調した。
経済成長見通しは、今年が2.4%、2018年が2.3%、19年が1.9%とし、前回9月時点での2.2%、1.8%、1.7%からそれぞれ引き上げた。20年は1.7%。
インフレ見通しは、今年が1.5%、18年が1.4%、19年が1.5%。前回予想はそれぞれ1.5%、1.2%、1.5%だった。20年の見通しは1.7%で、ECBの物価目標である2%近辺を下回る。
ドラギECB総裁は理事会後の会見で「マクロ経済見通しの修正は全般的に適切な方向へと進んでいる」と指摘。また賃金の伸びが抑制されていることに言及し、これは相当規模の金融刺激策が依然として必要であることを示していると強調した。
同時に、2カ月前と比較してインフレ目標の達成は可能との確信は強まっているとも述べた。米連邦準備理事会(FRB)が前日、利上げを決定したことについては、FRBの引き締めによるマイナスの影響はみられていないとした。
ECBの決定を受け、ユーロ/ドル
成長・インフレ見通しの引き上げにも関わらず、ECBは政策スタンスやガイダンスの変更について討議しなかった。ECBは成長の下支えや物価押し上げに向け、これまでマイナス金利や大規模な資産買い入れプログラムを導入。その甲斐あって域内の経済は過去数年、順調に回復しているが、ここにきて経済が予想以上に強まっているのではとの見方も出ている。12月のユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)速報値は58.0と、2011年2月以来約7年ぶりの高水準を記録。独IFO経済研究所は18年のドイツ経済成長見通しを2.6%とし、従来の2.0%から上方修正するなど、強気な予想を示している。
こうした流れを背景に、ECB内ではタカ派中心に、ECBの対応の遅れへの懸念とともに、来年の資産買い入れ終了に向け、市場への地ならしを行うべく、ECBが発するメッセージの変更を求める声が上がっている。だがドラギ総裁は、資産買い入れの正式な終了期日もしくはインフレと債券買い入れの連動に関する議論はなかったと述べた。
INGのエコノミストは「かつてユーロ圏は集中治療室(ICU)で手当てを受ける重篤患者のようなものだ、とのたとえがあった」指摘。「主治医はECBで、患者にリハビリを施し、金融緩和という松葉杖を使って再び歩けるよう治療するというものだが、ドラギ総裁はこの日、インフレが起きない限り、患者は早足で歩いても大丈夫との診断をあらためて下した。それはつまりフルマラソンを走れるようになるまで松葉杖を使ってもよいということだ」と話した。
南アフリカの家具製造・販売大手シュタインホフ
シュタインホフは6日、会計処理上の不正行為があったとして、マーカス・ヨーステ最高経営責任者(CEO)の辞任を発表。同社の株式と債券が売りを浴び、格付け会社ムーディーズは7日、同社の格付けを投機的等級(ジャンク級)の「B1」に4段階引き下げた。ECBは今年の夏にシュタインホフの社債を買い入れており、11日に公表された保有社債のリストにも入っていた。保有額は開示されていないが、社債買い入れプログラムの1300億ユーロに上る保有額に占める割合は小さいとみられる。
*内容を追加して再送します。