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アングル:米税制改革進展で早くも銘柄物色、注目されるポイント
12月5日、米税制改革法案が上院で可決され、日本の株式市場でも関連銘柄の物色が早くも始まっている。写真は東証のブース、昨年2月撮影(2017年 ロイター/Issei Kato)
[東京 5日 ロイター] - 米税制改革法案が上院で可決され、日本の株式市場でも関連銘柄の物色が早くも始まっている。米国子会社の利益構成比率が高い企業ほど恩恵を受けやすいとみられているが、現在の税負担度や傘下の米国法人の株主割合なども最終利益を左右しそうで、専門家は「3つのポイントがある」と指摘している。
<米国での利益構成比>
電炉大手の大和工業<5444.T>は、5日の東京市場で4.33%高となった。鉄鋼株セクター<.ISTEL.T>自体が1.97%上昇と、続落となった日経平均<.N225>に対し逆行高となっていたが、同セクターの中でも大和工は2番目の上昇率となった。
市場で注目されたのが、野村証券の4日付のリポート。鉄鋼・非鉄・電線セクターを担当する野村証券のリサーチアナリスト、松本裕司氏によると、米税制改革の恩恵を受けやすい日本株は、傘下の米国法人の利益構成比が大きい銘柄だという。その例として、大和工業などが恩恵を受けやすいと指摘した。これが1つ目のポイント。
松本氏の予想では、大和工業は2019年3月期に親会社株主利益ベースで、53%をグループ内の米国法人が占める。米国の連邦法人税が35%から20%に引き下げられれば、同社の場合、19年3月期の1株当たり純利益(EPS)を10%強押し上げると試算した。
同セクターでは、住友金属鉱山<5713.T>、古河電気工業<5801.T>、三菱マテリアル<5711.T>、日立金属<5486.T>、UACJ<5741.T>などが、経常利益などに占めるグループ内の米国法人構成比が20%前後になると試算。古河電工以外の4社については、EPSを5%弱押し上げると予想している。
<税負担や株主構成>
古河電工の予想EPSの伸びが鈍いのは、現状の税負担の違いだ。その点が2つ目のポイントになる。
同社は米国での光ファイバー事業の収益貢献度が大きいものの、過去の累損がある。すでに一部の外形標準課税以外は米国での税負担があまりなく、税制改革による減税効果を受けにくいとみられている。
3つ目のポイントは米国法人の株主構成で、日本本社が米税制改革の恩恵を受けることができる度合いを左右する。三菱マテリアルとUACJは一部の米国法人が合弁会社で、EPSベースでの影響は、単純計算より小さくなる可能性があると松本氏はみている。
<自動車やハイテクにも恩恵期待>
税制改革の柱となるのは、法人税率の引き下げなど。親会社が日本企業でも米国法人は課税の対象となるため、米国事業の利益構成比率が高ければ、減税メリットも大きくなりやすい。
また、米国への資金還流でドル高/円安が進めば、輸出にもメリットになる。さらに個人所得の減税も考慮すれば、消費拡大を通じてゲーム分野などで人気のある日本製品にも恩恵が見込まれる。
米国での売上高比率が大きい業種としては、自動車などの輸送用機器や電気機器、機械などが挙げられる。「税金面からメリットを受ける機会が大きい」と、三井住友アセットマネジメントのシニアストラテジスト、市川雅浩氏はみている。
ただ、米税制改革案の成立にはまだハードルが残されている。2日の上院採決は、賛成51、反対49の小差による可決だった。
今後の焦点は上院案と下院案の一本化だが、調整は一筋縄ではいかないとみられている。現在はまだ法案成立の「見込み」で動いている相場だけに、失望にも警戒が必要となりそうだ。
(平田紀之 編集:伊賀大記)