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アングル:ジャクソンホール、欧米中銀トップのメッセージ探る市場
8月24日、米ジャクソンホールで開催される経済シンポジウムを控え、市場はこう着感が強まっている。注目は欧米中銀トップ2人の講演。写真は2014年8月にジャクソンホールで会話を交わす欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁(左)と米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長(2017年 ロイター/David Stubbs/File Photo)
[東京 24日 ロイター] - 米ジャクソンホールで開催される経済シンポジウムを控え、市場はこう着感が強まっている。注目は欧米中銀トップ2人の講演。タカ派的かハト派的か、または中立的か──。ドルとユーロの2大通貨の方向性に大きな影響を与える可能性もあるだけに、イベントを挟んで神経質な相場展開となりそうだ。
<イエレン議長は何を重視するか>
米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は、日本時間25日の午後11時から「金融の安定(Financial Stability)」というテーマで講演する。
市場が注目するのは、同議長が講演のなかで、インフレか、それとも金融の不均衡か、いずれを重視するかという点だ。
インフレであれば、最近の米物価の伸び悩みを背景に、年内の利上げ観測は後退する可能性がある。
一方、過去最高値圏にある米株価などを取り上げて金融不均衡への警戒感を示すならば、不均衡是正のために、金融政策「正常化」へのピッチを速めるとのタカ派的な思惑が強まる可能性がある。
FRBの「伝統」からすれば、金融不均衡を予防するのに金融政策を用いるのは最後の手段になるが、最近の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨などをみると、FRB内に金融不均衡を懸念する声が強まっていることがわかる。
投機筋のドルポジションはショートが膨らんでいる。IMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組は、8月8日までの1週間で、ドルの主要6通貨(円、ユーロ、ポンド、スイスフラン、カナダドル、豪ドル)に対する売り越しが2013年1月以来の大きさとなる102億3000万ドルだった。15日までの週には88億4000万ドルに減少したが依然、高水準だ。
このためドルは、金融不均衡の是正を重視する発言への反応の方が大きくなりやすそうだ。米国では雇用統計や小売売上高といった指標は底堅さを示すものの、インフレ指標が伸び悩んでおり、CMEのFedウォッチによると12月利上げの織り込みは4割程度にとどまっている。
<ドラギ総裁はシントラを踏襲するか>
一方、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、日本時間26日午前4時から講演する。テーマはまだ未公表だが、ECBの報道官は16日、ダイナミックなグローバル経済の促進というシンポジウムのテーマに焦点を当てると説明した。
6月終盤、ドラギ総裁はポルトガルのシントラで開かれたECBの年次政策フォーラムで「デフレ圧力はリフレに変わった」と指摘。大規模な債券買い入れや超低金利といったECBの政策を微調整する可能性を示唆したとの観測が浮上し、外為市場ではユーロ高に弾みがついた。
ジャクソンホール会合では、出口政策への思惑をさらに高めるような発言があるかどうかが焦点だ。市場では、9月理事会で資産買い入れの縮小が示唆されるとの見方が強い。ジャクソンホールでその地ならしをするような発言があれば、足元で足踏み状態となっているユーロは、上昇再開となりそうだ。
もっとも、今回のジャクソンホールは「サプライズなしがコンセンサス」(邦銀)という。「あまりに注目が集まり過ぎているため、要人も市場にインパクトを与えたくないだろう」と、三井住友信託銀行のマーケット・ストラテジスト、瀬良礼子氏は指摘。本来の、学術的な問題を議論する場に戻そうとする動きになりそうだとみている。
バンクオブアメリカ・メリルリンチのチーフ日本FX株式ストラテジスト、山田修輔氏も「ECBは、FRBのバランスシート縮小の決定を確認してから動くと予想している。ジャクソンホールでは、決定的な発言はないだろう」と予想している。
ただ、イエレン議長、ドラギ総裁ともに発言が中立的だったとしても、市場が都合よく解釈し、相場が動くリスクもある。昨年のジャクソンホールでのイエレン議長の講演も、穏当な内容との見方もあったが、市場ではタカ派的との解釈が広まり、ドル買い材料とされた。
ユーロは、15日までの週の投機筋のポジションは7万9267枚のユーロ買い越し。前の週の2011年5月以来の9万3685枚からは減ったものの、こちらも高水準となっている。
トウキョウフォレックス上田ハーローの営業推進室長代理、阪井勇蔵氏は、ユーロは「レベル的にかなりいいところまで来ている」として、会合での発言内容次第では巻き戻しが強まって1.16ドル台への調整もあり得るとみている。
(平田紀之 編集:伊賀大記)