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門間元日銀理事、実質金利低下の効果を疑問視 家計に悪影響も
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4月5日、元日銀理事でみずほ総合研究所・エグゼクティブエコノミストの門間一夫氏は今後見込まれる物価上昇に対する市場の混乱を回避するためにも、日銀は早めに経済・物価見通しと整合的な長短金利の目標水準を示すべきだと指摘した。2014年1月撮影(2017年 ロイター/Yuya Shino)
[東京 5日 ロイター] - 元日銀理事でみずほ総合研究所・エグゼクティブエコノミストの門間一夫氏は5日、日銀が名目金利を抑制し続ける中、今後の物価上昇が家計に悪影響を与える可能性があるとし、さらなる実質金利の低下が日本経済にプラスかどうか「判断が難しい局面にきている」との認識を示した。ロイターとのインタビューで語った。
門間氏によると、景気回復などを背景に、物価の基調を反映した生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価(コアコアCPI)の前年比は、今年後半にも足元のゼロ%程度からプラス0.5%程度に上昇率を高める可能性がある。
日銀がイールドカーブ・コントロール(YCC)政策によって長期金利を目標のゼロ%程度に抑制し続ける中、「実質金利が0.5%ポイント程度下がることが(日本経済にとって)適切かどうか、大きな論点になり得る」との見解を示した。
具体的には、預金金利がほぼゼロ%に低下する一方、運用難を背景に各種保険料が値上げされ、賃金上昇が緩やかな現状では、物価上昇が個人消費に悪影響を及ぼすと懸念。他方、実質金利の低下に対する企業の投資感応度は「鈍っている」とし、「今の金利環境は家計にとって望ましくない。実質金利低下の効果がプラスかマイナスか、判断が相当に難しい局面にきている」と語った。
日銀は、これまでの金融緩和策の効果を実質金利の低下で説明してきた。だが、家計への影響について「日銀も分析が十分にできてないだろう」とし、今後の物価上昇局面で「日銀が何としても名目金利目標を据え置くのか、物価上昇に見合って緩やかに金利を引き上げ、実質金利の低下を防ぐのか、現時点でははっきりしない」と語った。
門間氏は、実際に物価が上がり出す前に「日銀は政策反応関数を示すべき」と強調。米連邦準備理事会(FRB)の金利見通しを参考に、四半期ごとに公表している「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」において「経済・物価見通しと整合的な長短金利の水準を示す」ことを提案した。
その前提として、物価2%目標を意識して過度に高く設定されている物価見通しを現実的な水準に修正すべきとも主張。
日銀は現在、17年度の消費者物価(除く生鮮食品)が平均で前年比プラス1.5%と見込んでいるが、門間氏は「1%弱が精いっぱい」と予想。4月末に公表する次回の展望リポートで下方修正される可能性があると語った。
*内容を追加しました。
(伊藤純夫 木原麗花 編集:田巻一彦)