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市場への影響見極めつつ、短期国債の残高圧縮望ましい=佐藤日銀委員
3月1日、日銀の佐藤健裕審議委員(写真)は、徳島市で講演し、日銀は国債の残高を圧縮するのが望ましいとの見解を示した。写真は都内で2012年9月撮影(2017年 ロイター/Yuriko Nakao)
[徳島市 1日 ロイター] - 日銀の佐藤健裕審議委員は1日、徳島市で講演し、日銀は短期国債の残高を圧縮するのが望ましいとの見解を示した。また、現在ゼロ%としている長期金利目標は、市場の動向を追いかける形で緩やかに引き上げるべきと提唱した。これまでマイナス圏で推移してきた消費者物価指数(CPI)が今後はエネルギー価格の上昇により2017年度後半にも1%に達する可能性があり、長期金利が急上昇する可能性もあると指摘した。
アベノミクスの中核である巨額の国債買い入れにより、日銀の資産は国債だけで発行済み総額の4割を占める400兆円超と空前の規模に達しており、今後の政策運営が焦点となっている。昨年9月に政策の柱を年間80兆円の国債残高拡大から金利にシフトしたが、国債買い入れの量のめどとして引き続き「80兆円」を掲げており、今後の取り扱いが注目されている。
<80兆円、縛られる必要ない>
佐藤委員は80兆円の目標について「長期国債買い入れでも埋めきれない」、「短期国債買い入れも本来的に不要」と指摘。「短期金融市場への影響を見極めつつ(短期国債の)残高をさらに圧縮していくことが望ましい」と強調した。
「量と金利を同時に目標とすることはできないため、長期金利ゼロ%を継続する場合、買い入れ減少に向かう」ため、「80兆円の『めど』はあくまでめど、あまり縛られる必要はない」と説明した。
<金利目標、市場追認する形での調整が適当>
長期金利目標をゼロ%に「長く抑えすぎると、金融不均衡の蓄積を招く恐れがある」ため、 「市場の動きを追認する形で柔軟に調整するのが適当」とし、金利上昇局面での緩やかな引き上げを提唱した。
昨年末以来の金利急上昇局面で日銀が実施した指し値オペは「日銀が特定の金利水準にコミットするメッセージを発するため、その後の政策運営を縛る」と警戒した。
年限ごとの金利水準を並べたイールドカーブ(利回り曲線)について、「望ましい経済・物価情勢の実現には適度にスティープ(急傾斜)であるべき」と述べ、超長期金利の上昇を是認。その場合でも超長期で資金調達する企業は公益企業などなので「設備投資への抑制効果はほとんどない」と付け加えた。
長期金利ゼロ%が長期化すれば「財政規律が弱まる」リスクがあり、「財政への信認低下で長期金利が上がる場合、日銀が抑えることができるかどうか不確実」と警戒した。
<物価は1%超え展望も>
物価は「原油と為替次第だが、17年度後半にかけて前年比1%超えを展望できないわけでない」と述べ、「足もとのエネルギー価格持ち直しが、予想物価上昇率を幾分高める方向に働く」とも分析した。
物価が市場の想定を上回り上昇すれば「長期金利への上昇圧力が高まる可能性があり、丹念にモニタリングしたい」と強調した。
<シムズ理論、「研究蓄積不十分」>
金融政策よりも財政政策が物価を左右するとのシムズ理論について「実証的な研究蓄積が不十分」と批判、「ヘリコプター・マネー論者が言及する無利子永久国債の中央銀行による引き受けは、実務上現実的でない」と慎重な見方を示した。
*見出しおよび1・3段落目の表現を修正しました。
(竹本能文)