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ECB理事会後のドラギ総裁の発言要旨

2016年12月09日(金)01時14分

12月8日、欧州中央銀行は現在月額800億ユーロとしている債券買い入れの規模を来年4月から月額600億ユーロに縮小することを決定した。来年3月末までは現行のペースを維持する。写真は同日、理事会後に記者会見するドラギ総裁(2016年 ロイター/Ralph Orlowski)

[フランクフルト 8日 ロイター] - [フランクフルト 8日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は8日に開いた理事会で、現在月額800億ユーロとしている債券買い入れの規模を来年4月から月額600億ユーロに縮小することを決定した。来年3月末までは現行のペースを維持する。買い入れは2017年末まで、もしくは必要に応じてそれ以降も継続するとした。

ECBは主要政策金利を0.00%に、中銀預金金利をマイナス0.40%にそれぞれ据え置いた。据え置きは予想通りだった。

ドラギECB総裁の会見での発言要旨は以下の通り。

<トランプ効果>

トランプ氏の米大統領選勝利や、英国の欧州連合(EU)離脱決定、イタリア国民投票の結果といった重要イベントの影響を見極めるのは困難だ。市場は予想以上に底堅いことを証明した。多くの理由、原因があるだろう。各規制当局が講じた措置が支援したことは間違いない。これらのイベントによる本格的な影響は中長期的に出てくるだろう。こうした影響を現時点で評価するのは非常に難しい。

<600億ユーロの買い入れ継続理由>

月額600億ユーロの買い入れをさらに長期間継続する理由としてはまず、デフレリスクが脱却する方向に一層傾いていることが挙げられる。また800億ユーロから600億ユーロに減額することで買い入れ縮小が起きないようにしたいというのも理由の一つだ。

<買い入れ増額は可能>

資産買い入れプログラム(APP)は拡大し得るし、月額の買い入れ額は800億ユーロに戻る可能性もある。それは一連の選択肢のなかに含まれており、われわれは状況を注視している。

<ECBは市場にとどまる>

「見通しが一方で不利な状況となれば」という文言の真意は、実際の場で資産買い入れ縮小は存在せず、欧州中央銀行(ECB)は市場にとどまり、市場価格に圧力をかけ続けるということだ。

<不透明な政治情勢への対応>

向こう1年間の選挙日程を見れば良い。それ自体が不透明な情勢の要因だ。新興国市場経済に起きていることを見てほしい。かなり不透明な状況だ。政治関係が大半を占め、われわれに対処できるかは議論の余地がある。各国中銀にできることは、気をつけて対処し続けることだ。 他方、改革が必要な国々は、不透明な政治情勢一般に関係なく、改革を実行しなければならない。不透明な情勢に対処する最善の方策は実際のところ、成長や雇用を回復させ、雇用を創出することだからだ。

<量的緩和の規定変更をめぐる法的リスク>

(リスクは)存在しない。

<テーパリングの意味>

テーパリングという言葉は、誰が使うかによって意味が変わってくるものの、自然に解釈するなら、買い入れが段階的にゼロに向かう政策を指すものである。それはこれまで議論されておらず、議題にも上がっていない。

<イタリアの銀行>

銀行システムとイタリアの脆弱性が長期にわたって存在する。対応すべきで、政府がなすべきことを認識し、問題に対処すると確信している。

<現実的>

理事会は、当面の期間に生じ得るさまざまなリスクに対応すべく、現実的で柔軟な方法で行動している。

<買い入れ規模を月額600億ユーロとした理由>

インフレ目標への持続的な回帰に関する見通しは、買い入れペースを月額600億ユーロとしたプログラム開始初期の状況とそれほど大きく変わらないと、現時点でわれわれは基本的に判断した。

より具体的に言えば、デフレリスクはおおむね解消した。ただ先行き不透明性はなお払しょくされていない。

<スタッフ予想で2019年のインフレ見通しを1.7%としたことは、2%をやや下回るとするECBの目標達成を意味するか>

意味しない。われわれは継続する必要がある。

<預金金利下回る買い入れ>

資産買い入れプログラム(APP)のもと、預金金利を下回る水準での買い入れは、必要な範囲で許容される。したがってこれは選択肢の一つであって義務ではない。委員会等としては1月以降、それが必要となった場合に対応を検討する。買い入れプログラムの円滑な運用継続に向け選択肢を増やす狙いがある。

<他に検討した選択肢>

政策を決定するにあたり、月額800億ユーロの買い入れを半年間継続するという選択肢もあったが、今回決定した、4月以降年末まで月額600億ユーロを買い入れる案が理事会でかなり広範な支持を集めた。

<テーパリング>

テーパリング(資産買い入れ縮小)については協議していない。

<構造改革のすすめ>

ユーロ圏内のすべての国で構造改革が必要だ。十分な公共インフラの提供など、生産性を高め、事業環境を向上させる措置を中心に考えるべきだ。投資拡大や雇用

<インフレトレンドが上向く兆候見られず>

(インフレ見通しの引き上げは)おおむねエネルギー価格の前年比での上昇を反映している。基調的なインフレに説得力のある上昇トレンドが出る兆候はまだ見られていない。

<総合インフレ>

現在の原油先物価格を踏まえて将来を見渡すと、総合インフレ率は、エネルギー価格の前年比での変動が主な要因となり、年末年始あたりに一段と大きく上昇する可能性が高い。

<成長リスク>

ユーロ圏の成長見通しを取り巻くリスクは引き続き下方向に傾いている。

<世界経済の回復強まる>

世界経済の回復は多少ながら強まる兆候が見受けられる。一方、ユーロ圏の経済成長は構造改革の進ちょくの遅れや一部セクターで残っているバランスシート調整によって圧迫される見通し。

<インフレを注視>

理事会は物価安定の見通しがどのように展開するか注視し、目標達成に向け正当化されるなら、責務の範囲内で利用可能なあらゆる手段を用いて対応する。

<回復は強まりつつある>

(政策の)調整は、ユーロ圏経済の緩やかではあるが強まりつつある回復、およびいまだ抑制されている基調的なインフレ圧力を反映している。

<資産買い入れの新規定>

公的セクター買い入れプログラムの償還レンジについて、買い入れ対象の残存償還期間の下限を現行の2年から1年に引き下げることで拡大する。中銀預金金利を下回る利回りの国債買い入れも必要な範囲で認められる。

<資産買い入れ再び増額も>

見通しが悪化したり、金融情勢がインフレの道筋の持続的な調整に向けた一段の進展に整合しないものになった場合、理事会は買い入れプログラムの規模拡大、もしくは買い入れ期間の延長を決定する。

*内容を追加しました。

ロイター
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