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インタビュー:今期の海外黒字化、計画に変更ない=尾崎・野村COO
7月8日、野村HDの尾崎哲・代表執行役グループCOOは、経営課題の1つとなっている今期中の海外部門の黒字化について、実現できるとの考えを示した(2016年 ロイター/Issei Kato)
[東京 9日 ロイター] - 野村ホールディングス<8604.T>の尾崎哲・代表執行役グループCOOは、経営課題の1つとなっている今期中の海外部門の黒字化について、実現できるとの考えを示した。市況が不安定さを増しているが、計画に変更はないとしており、実現すれば7年ぶりの黒字になる。ロイターとのインタビューで述べた。
英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)決定や世界的な低金利が続く中で、投資家は利回り志向を強め、金利・通貨のトレーディングやそれに関連する金融商品へのニーズが増加。結果として野村のビジネスに追い風になっているという。また、中長期的な成長戦略として、アジアのウエルスマネジメントを強化し、ホールセール部門との連携を深める重要性も示した。
野村HDは今年4月、ホールセール部門のコスト削減を発表。欧州の株式調査部門をはじめ、不採算ビジネスの閉鎖・縮小で、海外の黒字化への道筋をつけたが、ブレグジット後には相場が大きく荒れ、野村を含む金融機関の株価は売りに押されている。
主なやり取りは以下の通り。
──足元の状況はどうか。
「(ブレグジットは)想定していなかったが、今期はそんなにいい環境にならないと早めに言い切っていてよかった。(コスト削減で)早めに多少シュリンクできていた。ネガティブ・イールドを含め、前人未到の環境にどんどん入り、(顧客である)投資家は悲鳴を上げている。英国民投票を経て不透明感も広がり、(われわれは)ものすごく忙しくしている」
「マイナス金利で投資家の悩みも増え、(機関投資家、企業からの)クロスボーダーの投資ニーズが増えている。(野村は)そのニーズをくみ取りソリューションを提供する」
──今期掲げている海外の黒字化の計画は予定通りなのか。
「(ブレグジットもあり)ここまでの状況は想定していなかったが、顧客ニーズは想定より増えており、何とかそういう方向で行きたいというのは変わらない」
──削減した部分があった一方で、アジアのウエルスマネジメントでは陣容を大幅に拡大している。どのようにグループの成長に結びつけるのか。
「アジアではウエルスマネジメントの顧客の多くがハイネットワース(超富裕層)だったり、コングロマリットの長だったりする。こうした方々の運用ニーズをウエルスマネジメントで行い、企業のソリューションを投資銀行や(トレーディングなどを行う)グローバルマーケッツの部門で提供する。2つを連携できる可能性が、アジアでは大きいと考えている」
──アジアではプレーヤーが多く競争がさらに激しい。
「伝統的な上場会社に対するファンディング(を野村が行うの)はかなり厳しい。かつ、商業銀行のようなローンを提供できないと、かなり入り口でハンディキャップがあるのは事実だ」
──それをどう克服するのか。
「なかなか難しい。債権者としての目線は、往々にして株主目線とコンフリクトがある。(野村は)ローンを提供しないことで、債権者としての立ち位置がないので、ニュートラルにアドバイスを提供できる。それが(欧州だけでなく)アジアでも通用しないかと考えている。ローンを出さなくてもトータルの信頼関係のなかで選択されるということだ」
──アジアのウエルス強化は、M&Aかオーガニック(自前の経営資源を使った成長)の拡大か。
「たぶんかなりオーガニックだと思う。いろいろと売り物も出るが、カルチャーやシステムも違う。野村証券のウエルスはかなりユニークで銀行とも違う」
──日本では消費増税の再延期があり、仮に国債が格下げになると金融機関も格下げのリスクに直面する。それでも海外は黒字を目指せるか。
「そこまではまだ、本当に格下げになるとは感じていない。ただ、これは相対的な問題。(他社との比較などで)相対的に劣後すると、ビジネスのモデルは変わらざるを得ないだろう。その時は少し違うモデルになっているかもしれない」
*インタビューは7日に行いました。
(江本恵美、トム・ウィルソン 編集:石田仁志)