ニュース速報

ビジネス

インタビュー:資源分野利益を20年に3倍へ、投資継続=三井物産社長

2016年07月02日(土)11時35分

 7月1日、三井物産の安永竜夫社長(写真)は、ロイターとのインタビューで、2016年3月期に大幅な減損損失を計上した資源分野について、収益性など投資のハードルを上げつつも縮小はせず、今後も強化していく方針を示した。都内で1日撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 1日 ロイター] - 三井物産<8031.T>の安永竜夫社長は1日、ロイターとのインタビューで、2016年3月期に大幅な減損損失を計上した資源分野について、収益性など投資のハードルを上げつつも縮小はせず、今後も強化していく方針を示した。これにより、2020年に同分野の利益を2000億円まで回復させたい意向だ。

同社は前期に資源関連で2300億円の減損損失を計上。最終損益は834億円の損失と、創業以来の赤字に転落した。こうした状況を受け、同様に赤字に転落した三菱商事<8058.T>は商品市況に左右されない体質への転換を目指し、今後3年間は資源分野の資産残高を増やさない方針を打ち出している。

安永社長は回復への道筋について「強いところを徹底的に強くしていく」と説明。同社の強みは資源エネルギーにあるとして「いまの市況でも十分に利益が出るものをしっかりやっていく」と述べ、今後も同分野を強化していく方針を示した。

原油と鉄鉱石については「市況は底を打ったと思っているが、上値が重い状態は今後も続く」とみており、「コンサバティブな市況予測をベースにしてもペイすることを確認した上で、ハードルを少し上げても収益性のあるものを厳選してやっていく」と強調した。

こうした取り組みにより、「チャレンジングではあるが、2020年には市況の回復と併せて資源で2000億円、非資源で2000億円の利益を目指していきたい」と意欲を示した。

同社は今期、最終利益2000億円を計画しており、このうち資源分野は600億円、非資源分野は1400億円を見込んでいる。

資源分野に関しては「生産減によりサプライサイドが締まってきている中で、次の投資案件が出てくるタイミングでもある」と指摘。「市況回復のみではなく、いまだからこそ手に入れられる権益もしっかりやっていく」と述べ、2020年に資源分野の資産は「大きくなっているイメージだ」との見通しを示した。

過去最高の最終利益4344億円を計上した2012年3月期には、エネルギーと金属の資源分野で全体の9割にあたる3894億円を稼ぎ出した。それに比べると2000億円はまだほど遠い水準にあるが、収益性の高い資産を積み増すことで、長期的な競争力を高めていく。

一方、非資源分野については「ハイドロカーボン(炭化水素)の下流を含む素材分野、インフラ、モビリティー、ヘルスケアを中心に、市況の変動にさらされにくい収益基盤を作り上げていく」と説明した。

総合商社のビジネスモデルは時代とともに変化しており、資源価格が低迷する中で、現在もまた岐路に立たされている。そうした中、一部では総合商社の合併可能性もささやかれている。安永社長は「個別領域ごとに意味があるものがあればやる」としながらも、会社同士の合併については「おそらくシナジーが出ない」と述べ、否定的な考えを示した。

英国の欧州連合(EU)離脱決定の影響に関しては「基本的にはロンドンの優位性は揺るがないと思っている」とした上で、万が一その状況が崩れれば、「事業分野ごとに(拠点をロンドンから)動かすことも必要」と述べ、状況次第では体制を見直す可能性を示唆した。

ロンドンの現地法人は欧州やアフリカ、中東地域を管轄しており、この地域の中核的な役割を担っている。

*写真を差し替えて再送しました。

(大林優香 志田義寧)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米上院、ヘグセス氏の国防長官人事を承認 賛否同数で

ワールド

トランプ氏がノースカロライナとロス訪問 FEMA廃

ワールド

アングル:戦争終結ならウクライナ人労働者大量帰国も

ビジネス

米国株式市場=反落、来週のFOMCや主要指標に警戒
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」
  • 3
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄道網が次々と「再国有化」されている
  • 4
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 5
    電気ショックの餌食に...作戦拒否のロシア兵をテーザ…
  • 6
    早くも困難に直面...トランプ新大統領が就任初日に果…
  • 7
    軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも…
  • 8
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 9
    「ホームレスになることが夢だった」日本人男性が、…
  • 10
    ロシア軍高官の車を、ウクライナ自爆ドローンが急襲.…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 6
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 7
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 8
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中