ニュース速報

ビジネス

アングル:中国建機業界「遠い夜明け」、ネックは過剰生産

2016年05月06日(金)15時15分

 5月6日、掘削機やブルドーザーなどの建設機械の中国内販売台数は、月間ベースで過去2年間減少が続いていたが、2016年1─3月になるとようやくプラスに転じた。写真の建設機械は北京郊外で4日撮影(2016年 ロイター/Fang Yan)

[北京/香港 6日 ロイター] - 掘削機やブルドーザーをはじめとする建設機械の中国での販売台数は、月間ベースで過去2年間、減少が続いていたが、不動産販売と建設活動が上向くなかで、2016年1─3月になるとようやくプラスに転じた。

ただディーラーやコンサルタント、そしてメーカー自身も、年初の堅調な動きは回復の始まりを示唆するものではなく、ごく一時的な上向きに過ぎないと慎重な見方を崩していない。かつての建設ブームのお蔭で中国は世界的な金融危機から脱却することができたが、最近の明るい兆候は、業界が引きずる痛みを覆い隠しているに過ぎないというのだ。

新たな排出量規制は建機の販売を後押ししているが、以前は掘削機やローダーを量産していた工場は、現在では生産能力のほんの一部しか稼働しておらず、稼働率は20─25%程度にとどまっているという。

さらに、建設ブームの時代に購入された機械は今ではほとんど使用されておらず、経営破産した建設会社から差し押さえられた建機は中古品市場に大量に流入しており、新たな建機販売の足かせになっている。

年初の中国の経済指標は建設の持ち直しを示すなど総じて好調で、エコノミストの一部は16年の中国成長率予想を引き上げた。ただ4月は振るわず、景気は早くも失速しつつあるとの懸念が広がっている。

ロイターの記者は、北京郊外にあるディーラーを訪ねたが、人影はまばら。まだ包装材に包まれた掘削機やフォークリフトトラックが中古品に交じって放置された状態だった。買い手の姿はまったくなかった。

広西柳工機械<000528.SS>の建機を販売しているディーラーのマネジャーは、ピーク時には需要に追い付かないほどだった、と振り返る。

「待ちきれない顧客は柳工に直接行って、工場の外で列を作ったものだ」と語った。今や、買い手が付く3台のうち2台は中古、という。

世界最大の重機器メーカー、米キャタピラーは先月、中国の建設部門に回復の兆しがみられる、と楽観的な見方を示したが、同時に「どの程度この状況が続くか見極める」などと慎重な姿勢も示した。

中国龍工<3339.HK>の営業担当者は、1─4月は売り上げが伸びたが、それは新たな排出量規制により、顧客が購入を前倒ししたことが大きいとし、こうした需要は長続きはしない、との見方を示した。

<機械が多過ぎる>

中国の建機セクターが抱えている主要な問題の1つは過剰生産だ。

中国と海外の企業は2008年以降、工場に積極投資して生産を急激に拡大した。その結果、景気が減速すると、作り過ぎの状態に。中国ではもはや売れなくなり、輸出市場に活路を求めざるを得なくなった。

建機市場を専門とするコンサルタント会社、オフハイウェー・リサーチによると、2015年の生産は2003年以来の低水準だった。

中国最大のブルドーザーメーカー、山推建機<000680.SZ>で中国国内での販売を統括するある幹部は「政府による投資の影響は当初考えていたほど大きなものではなかった。機械はすでにあふれている」と指摘。「2010年のような急成長は、もう戻ってはこない」と語った。

コマツ<6301.T>は先週、中国の需要が最大25%減少する可能性を警告。藤塚主夫・副社長CFO(最高財務責任者)は、中国市場について「製造業中心に成長が鈍化していることは変わらない」と述べた。

建機業界は確かに、最悪期と比べると回復している。最悪期には12カ月を超えていた在庫も、通常の水準に戻りつつある。例えば、中連重科<000157.SZ>では在庫は3─4カ月で、2カ月という通常のレベルとたいして変わらない水準になっていると、幹部の1人は話している。

しかし、中古市場の拡大や、既存の機械がほとんど使われていないといった現象に代表される供給過剰の問題は残っており、オフハイウェー・リサーチのマネジングディレクター、デービッド・フィリップス氏は、解消まであと1年から1年半はかかるとの見方を示している。

同氏は「とにかく仕事が少なすぎ、機械は多過ぎる」と語った。

(Fang Yan記者、Anne Marie Roantree記者 翻訳:吉川彩 編集:内田慎一)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進

ビジネス

トランプ氏が解任「検討中」とNEC委員長、強まるF
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 6
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 7
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 10
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 6
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中