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イエレン米FRB議長の会見要旨
3月16日、米連邦準備理事会(FRB)は16日まで開催した米連邦公開市場委員会で、政策金利の据え置きを決定した。写真は会見するイエレン議長、ワシントンで撮影(2016年 ロイター/Kevin Lamarque)
[ワシントン 16日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は16日まで開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の据え置きを決定した。だが米経済の緩やかな成長と力強い雇用の伸びを受けて、今年再び利上げすることが可能との認識を示した。
イエレン議長がFOMC後の会見で行った発言の要旨は以下の通り。
<FRBはマイナス金利を検討、協議しておらず>
これは検討または協議されている議題ではない。委員会は経済が改善しインフレ率も上向いている軌道にあると引き続き考えている。そのような形で状況が展開すれば、われわれは時間とともに金利を段階的に引き上げる公算が大きい。決まっているわけではなく、経済動向を注視し、異なる状況が発生した場合に対応する準備を整えている。だがどのような追加緩和が可能かについて活発に議論したり検討したりしていないし、もちろんマイナス金利を積極的に検討してもいない。
<毎回の会合で利上げ実施の可能性ある>
毎回の会合で利上げを実施する可能性があるということをあらためて繰り返す。4月の会合でも利上げを実施する可能性はあり、われわれは入手される経済指標を見極めていく。(4月会合まで)幾分短い期間ではあるが、6週間あり、労働市場やインフレ動向に関連するデータも新たに発表される。
<賃金>
労働情勢が幅広く改善しているにも関わらず、賃金が緩慢なペースでの伸びにとどまっていることに幾分驚いている。
かなりの数の企業が、賃金圧力に直面し、若干速いペースでの賃金の上昇を確認していると報告している。それにも関わらず、広範な賃金の上昇がみられないことは、労働市場に依然として緩みが存在することを示唆していると考える。
ただ、賃金は幾分上昇すると予想している。
<見通しに対するリスクのバランス>
委員会は見通しに対するリスクは確実に減ったと考えている。だが指摘したように、引き続きリスクがあるとみている。
リスクバランスが下向きと表現することはしないと決めた。委員会はまだ結論に至っていない。リスクが安定しているかどうかに関して、全体の判断はない。全体の判断を示すことは避けた。私の考えでは、リスクは安定していると考える参加者もいれば、やや下向きとみる参加者もいる。
米経済はここ数カ月、衝撃にもかかわらず底堅い。また世界情勢がやや下向きのリスクとなっているが、リスクがすべて一方向に偏っているわけではない。
<原油価格の消費支出に対する影響>
原油安が消費支出を押し上げなかったと決定的に言えるかどうか、厳密な意味ではこうした結論に至っていると確信を持っていない。
米国の典型的で平均的な家計は、現在の原油価格の水準で毎年約1000ドルの恩恵を受けていると見られる。私が確認した家計消費のパターンに関する非常に詳細なミクロ経済データによると、予想通り、ガソリンに振り向ける支出の減少と外食などに振り向ける支出との間には相関性があることが示唆されている。
ただ、総合的なデータはそれほど堅調ではなく、消費もそれほど強くない。もちろん、こうしたことには時間がかかり、原油価格が低水準にとどまれば次第にゆっくりと増加していく可能性はある。一方で、掘削活動は大幅に低下しており、投資の減少のほか、エネルギー部門の大幅な人員削減につながっている。
<原油価格とインフレ>
原油価格が1バレル=50ドルに上昇すれば、われわれのコアインフレの見通しの若干の上昇、さらに2%(の目標)回復までにかかると予想される時間の短縮につながる可能性がある。ただ、これだけでは政策に大きな影響は及ぼさないと見ている。
<インフレのオーバーシュート>
われわれのインフレ目標は2%で、われわれはインフレ率が2%に向けて回復すると予想しており、インフレを意図的にオーバーシュートさせようとはしていないことを明確にしておきたい。
2%は目標であるが、シンメトリックな目標である。われわれはこの目標をオーバーシュートしたくないのは明らかだ。ただ、アンダーシュートとオーバーシュートは経済のなかで自然に起こることで、われわれはこの双方をシンメトリックに容認する。
声明ではインフレがここ数カ月上向いたことを指摘した。これは、インフレに非常に大きな影響をもたらすことなく、かなり不安定になる傾向を持つ部門でインフレが通常より高まっていることが一部要因になっていると見ている。
私は心配しており、例えばコアインフレなどに、持続すると見られる大幅な上昇が出ているとはまだ結論付けていない。
FOMCは12月にも指摘したが、われわれは進展のトレンド、および進展を引き続き注視した。これには、このところのインフレ指標がやや高めの水準にあるとの事実も含まれる。一方で、インフレーション・コンペンセーションや一部指標はやや低めとなっている。こうした意味では、インフレ見通しをめぐっては双方向のリスクが存在する。
<後手に回りたくない>
米連邦公開市場委員会(FOMC)は昨年12月、インフレ率の2%回帰が望ましいとの考えを示した。一方で、(インフレ率の上昇が)多少著しい形で行き過ぎた結果、われわれが後手に回って、これまでの安定した雇用増を損ない得る、非常に急な形で、後で(政策を)引き締める必要に迫られないよう、注意したいとも考えている。
<世界経済・金融状況>
年明け以降、世界経済の見通しへの懸念に伴い、金融市場の変動は増大し、米国内における金融状況はややひっ迫した。ただ金融状況は最近になって著しく改善した。さらに海外経済の成長ペースは当初の見通しよりも多少弱まっているもようだ。しかしながらこうした想定外の動向は委員会の基本見通しを大幅に変えるものではない。
<金利見通し>
大半のFOMC参加者は現在、昨年12月時点に想定していた経済状況を達成するには、金利見通しを12月からやや引き下げることが必要な公算が大きいと予想している。ただ、参加者のフェデラルファンド(FF)金利見通しは、中央値も含め、将来の政策プランではないことを強調したい。金融政策に予め決められた軌道はない。
<FOMCの決定>
金融緩和政策の解除を慎重に進めることにより、海外を起因とするリスクにもかかわらず、労働市場が引き続き力強さを増していることを検証することが可能になる。短期金利がなおゼロ近辺にあるということは、金融政策が見通しの下振れより上振れに対応する余地が大きいことを意味しており、その点を踏まえると、こうした慎重さは適切だ。
声明でも指摘した通り、委員会はFF金利の緩やかな上昇しか正当化しない形で経済状況が進むと予想している。FF金利は当面、長期的に到達すると見込まれる水準を下回るレベルで推移する可能性がある。こうした予想は中立の名目FF金利、つまり経済が潜在水準近くで推移すれば拡大的でも縮小的でもない水準と定義される金利水準が、現在は歴史的な基準に照らし合わせて低く、時間とともに段階的にしか上昇しない公算が大きいとの見方に整合している。
<インフレ率>
個人消費支出(PCE)価格指数に基づく総合インフレ率は1月までの1年間に1.25%上昇し、伸びが加速した。2014年末頃からのエネルギー価格急落によるベース効果が剥がれ落ちたことが背景にある。エネルギー、食品を除くコアインフレ率も上向いた。だが、とりわけ先のエネルギー価格下落やドル高が総合インフレ率を引き続き押し下げる可能性があり、このインフレ加速が持続するかどうかは不透明だ。だが一時的な影響が後退し、労働市場が引き続き力強さを増せば、委員会はインフレ率が今後2━3年で2%に加速すると予想している。