ニュース速報

ビジネス

ECB理事会後のドラギ総裁発言要旨

2016年03月11日(金)00時55分

 3月10日、ECBは主要政策金利を0.00%に引き下げた。写真はフランクフルトで記者会見に臨むドラギ総裁。10日撮影(2016年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

[フランクフルト 10日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は10日、主要政策金利であるリファイナンス金利を予想外に0.05%から0.00%に引き下げた。

上限金利の限界貸出金利も0.30%から0.25%に引き下げ、下限金利の中銀預金金利はマイナス0.30%からマイナス0.40%に引き下げた。

資産買い入れ規模は月間600億ユーロから800億ユーロに拡大すると発表。買い入れ額は市場予想の700億ユーロを上回った。投資適格級の非金融機関発行の債券も買い入れ対象とする。

ドラギECB総裁の会見での発言要旨は以下の通り。

<ヘリコプターマネー>

ヘリコプターマネーについて検討したことも、討議したこともない。経済学者などの間で議論されている非常に興味深いコンセプトではあるが、われわれは実際に検討したことはない。会計的にも法律的にも複雑となる。

<ユーロ圏はデフレに陥っていない>

本日決定した措置は、われわれが目にしている変化に対応する上で十分なものだ。われわれがデフレに陥っているとは思わない。インフレ率は数カ月はマイナス圏で推移するが、年内にはプラスに転じると見込んでいる。従来の想定よりも時間がかかっているが、われわれはデフレ状況にはない。日本とは異なる。

<インフレ率引き上げに向けた措置をECBがとっていなかった場合>

ECBが何も対応していなかった場合、破壊的なデフレに見舞われていたはずだ。

<理事会内で新たな措置に対する過半数を大幅に超える支持>

決定にあたり、(理事会内で)過半数を超える支持が得られた。総じて非常に勇気付けられる討議だった。非常に前向きで建設的だった。

<長期流動性供給オペに対する大きな需要を予想>

魅力的な条件を付けたため、われわれは貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)に対する大きな需要があると予想している。

<金利>

金利は長期にわたり、また資産買い入れ期間の終了後も極めて低い水準にとどまる。本日の観点、およびわれわれの措置が成長やインフレにもたらす支援を勘案すると、一段の金利引き下げが必要になるとは思わない。もちろん新たな事実が状況や見通しを変えることはあり得る。

マイナス金利導入は、少なくともわれわれの経験においては、金融状況の緩和、および金融状況の改善が実体経済へと波及する点で前向きな成果を上げている。

これはいかなるマイナス金利も有益であることを意味するのか。銀行システムに何ら影響を及ぼすことなく、望むだけマイナス幅を拡大できるのか。答えは「ノー」だ。おそらくご存知の通り、われわれは階層構造の導入、こうしたすべてのオペレーションからの免除システムについて協議してきたが、最終的に理事会はそうしないことを決めた。制限なく金利のマイナス幅を拡大できると示唆したくなかったからだ。理事会はこの手段が引き起こす複雑な問題について認識を高めている。

銀行システム全体の収益性がマイナス金利の導入によって阻害されていないことを裏付けるデータがある。もちろんこれは総論であって、各行が同じ状況にあるわけではなく、どの銀行もそうだとは言えない。

<新たな長期資金供給オペ>

貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)は、銀行に対し長期資金を供給するオペであり、銀行には供給された資金を融資に回すインセンティブが与えられる。

われわれのTLTROプログラムの柱は以下の通りである。

1)2016年6月から2017年3月までに4回、四半期ごとに1回ずつ、オペを実施する。

2)期限はそれぞれ4年となるため、最後のTLTRO2オペで供給された資金の期限は2021年3月となる。

3)銀行は入札の際、主要リファイナンシング・オペ(MRO)金利を支払う。同金利は現在ゼロ%となっているが、融資高に応じて金利はさらに引き下げられる可能性がある。従って、最大限引き下げられた場合、入札時のTLTRO2の金利は中銀預金金利と同水準となる。

銀行が借り入れることができる額は、バランスシート上の融資額に対応したものとなる。つまり、実体経済に対し活発に融資を行っている銀行は、他の業務に集中している銀行と比べ、多くの資金を借り入れることができる。

<ユーロ圏内の需要>

ユーロ圏内の需要は、われわれの金融政策措置とそれが金融環境にもたらす望ましい影響、および過去の構造改革の追い風を受けて継続的に拡大する雇用に支援されるだろう。

<インフレ見通し>

2016年3月のECBスタッフ見通しでは、欧州連合(EU)基準の消費者物価指数(HICP)が2016年は0.1%、17年は1.3%、18年が1.6%となっている。

<投資適格級債券とQE>

われわれはユーロ圏に拠点を置く金融機関以外の企業が発行する投資適格級のユーロ建て債券を、新たな企業セクター買い入れプログラムの下で、通常の買い入れの対象となる資産リストに追加することを決定した。

<成長見通し>

データは需要の下振れを示している。ユーロ圏内の需要は、われわれの金融政策措置に一段と支援されるはずだ。

2016年3月のスタッフ経済見通しは、2016年のユーロ圏成長率が1.4%、17年が1.7%、18年が1.8%となっている。

<成長の足かせ>

新興国の成長見通し鈍化、不安定な金融市場、多くのセクターで必要なバランスシートの調整、および構造改革の実行ペースの鈍さにより、ユーロ圏の経済回復は引き続き阻害されている。

<インフレ見通し>

インフレ率は今後数カ月、マイナス圏にとどまり、今年のより遅い段階から上向くと予想される。その後はECBの金融政策措置や見込まれる景気回復により、一段と持ち直すだろう。

<賃金を注視>

理事会はユーロ圏の価格設定行動と賃金動向を注視する。現在の低インフレ環境が賃金や価格設定における二次的影響となって定着しないよう、とりわけ注意する。

<金利見通し>

理事会は主要金利が長期にわたり現在の水準か、これを下回る水準にとどまると予想する。

<インフレ率を回復させる必要>

原油価格の動向を反映し、向こう数カ月間はインフレ率が非常な低水準、場合によってはマイナス圏に落ち込むことは避けられない。ただ、インフレ率を2%に近いがこれを下回る水準に不当な遅延なく確実に回復させることで、二次的な影響の波及を防ぐことが重要となる。

<成長に対する下方リスク>

ユーロ圏の成長見通しに対するリスクは引き続き下向きである。

<高まっているリスク>

ECBが担う物価安定の責務に対し高まっているリスクに対応するため、今日決定した包括的な金融政策を通して、われわれはかなりの規模の金融刺激を提供している。

<緩やかな回復>

われわれは景気回復が緩やかなペースで進むと予想している。

<新たな措置>

この包括的な措置は、異なる手段同士のシナジーを活用する。また金融環境を一段と緩和し新たな信用供給を促すことで、ユーロ圏の回復の勢いを高め、インフレ率が2%弱の目標へと戻るペースを加速させるよう調整されている。

*内容を追加して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド洋大津波から20年、被災した各国で追悼式

ビジネス

中国GDP、23年は17.73兆ドルに上方修正 2

ワールド

韓国野党、大統領代行の首相への弾劾訴追案 27日採

ワールド

ウクライナによる高級将校暗殺を阻止、ロシア発表 4
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシアの都市カザンを自爆攻撃
  • 4
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 5
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命を…
  • 6
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 7
    「とても残念」な日本...クリスマスツリーに「星」を…
  • 8
    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …
  • 9
    日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落
  • 10
    ウクライナ特殊作戦による「ロシア軍幹部の暗殺」に…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 7
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 8
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 9
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 10
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中