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焦点:ガソリン安、米景気の浮揚効果薄れる 消費者は支出に慎重
2月1日、ガソリンなどのエネルギー価格が大幅に下落したが、米国民はそれによって浮いた資金を消費してしまわず、貯蓄に回している。昨年10月カリフォルニア州パサデナで撮影(2016年 ロイター/Mario Anzuon)
[ワシントン 1日 ロイター] - ガソリンなどのエネルギー価格が大幅に下落したが、米国民はそれによって浮いた資金を消費してしまわず、貯蓄に回している。石油安はかつてほどの景気浮揚効果をもたらさなくなっているようだ。
米商務省のデータによると、2014年半ば以来、原油価格が70%下落したことで、ガソリンその他のエネルギー商品に対する家計支出は年間1150億ドル減った。これは国内総生産(GDP)の約0.5%に相当する。
しかし同時に貯蓄額が1210億ドル増えている。商務省のデータはこの資金の出所を示していないが、別の調査を見ると、原資はエネルギー安で浮いた分のようだ。
ロイターとイプソスが米国民3068人を対象に実施した調査によると、75%はガソリン安によって生活必需品の購入が楽になったと答えた。浮いた額を高額の買い物に使っていないとの回答は過半数を占めた。40%以上の回答者は、節約分が債務返済に役立ったと答えた。
調査は1月15日から27日にかけてオンラインで実施された。
ジョージア州ピーチツリー市に住む女性は、ガソリン安のおかげで週に30ドルほど支出を節約できているが、高額の買い物をする計画はないと話す。ガソリン安は続かないかもしれない、との警戒感が一因だ。
消費者の慎重姿勢について一部のエコノミストは、2007─09年の景気後退の傷がまだ癒えていないためだと見ている。
ダラス地区連銀のカプラン総裁は、退職年齢に近づく国民が増えていることも、消費を慎重にさせていると指摘。ロイターのインタビューで「彼らはそれが気掛かりで、もっと貯蓄しなければと思っている」と話した。
<痛し痒し>
ダラス連銀は、石油価格が50%下がることによる経済成長率の押し上げ効果は年間0.5%ポイント程度にとどまると推計している。これは米国でシェールオイル・ブームが巻き起こる以前に比べ、半分にとどまる。
過去10年間で米石油産業が急拡大し、原油安による投資や雇用削減の重圧が以前より強まっていることが、この一因だ。ダラス連銀の管轄地区にはテキサス、ルイジアナ、ニューメキシコといった石油生産州が含まれる。
自動車や機械設備の燃費が向上したことも、石油安の恩恵を小さくしたとダラス連銀は分析している。
米国は2014年に世界最大の産油国となり、石油の輸入量は過去最低まで減っている。このため、たとえ石油安によって国民全般に小幅な恩恵がもたらされても、一般市民の目から見ると、エネルギー産業や産油地域が被った打撃の方が大きく映ってしまうのだ。
もっとも、石油産業の雇用削減や税収減が米経済全体に及ぼす悪影響は限られている。
大半が石油産業である米鉱業セクターは昨年第3・四半期、米国内総生産(GDP)に占める割合が1.6%にすぎなかった。また、石油・天然ガス掘削産業の雇用は米国全体の0.3%と、シェールブームのころの0.4%から下がっている。
ゴールドマン・サックスの推計では、エネルギー産業の投資落ち込みによる2015年の経済成長率押し下げの影響は約0.3%ポイントにとどまった。
(Jason Lange、Lindsay Dunsmuir記者)