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インタビュー:フィンテック、数年が勝負 IT企業に出資も=SMFG社長

2015年12月25日(金)00時10分

12月24日、三井住友フィナンシャルグループの宮田孝一社長はロイターとのインタビューで、フィンテック(金融と情報通信技術の融合)を利用して顧客の利便性向上に取り組んでいく必要があると語った。写真は2014年7月、東京で(2015年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 25日 ロイター] - 三井住友フィナンシャルグループの宮田孝一社長は、ロイターとのインタビューで、フィンテック(金融と情報通信技術の融合)を利用して顧客の利便性向上に取り組んでいく必要があると語った。今後、IT企業への出資や子会社化も検討する。

宮田社長は「顧客に便利だと思ってもらえるプラットフォームを作れるかどうかが重要。この数年で(金融ビジネスは)大きく変わる」と危機感を露わにした。今後、三井住友FGの顧客となっているIT企業への出資や子会社化も検討するという。

国際金融規制の動向については「世界の規制強化の流れは止まっていない」と指摘。規制の行く末が見通せるようになるまでは、大型買収や株主還元は慎重にならざるを得ないとの考えを示した。

インタビューの詳細は以下の通り。

――フィンテックによって、金融機関のビジネスがIT企業に置き換わる動きが出ている。

「金融に最後に残るビジネスは、ものはすごくベーシックな機能だけになりかねない。例えば預金を安全に預かることだ。後は、法人にしろ個人にしろ、フェース・ツー・フェースで高度なソリューションやコンサルティングを行うビジネス分野は残るだろう。逆にそれが残せない金融機関は劣後していく」

「そうしたコンサルティングなどの業務とは別に、決済や送金をモバイル機器などで手間や時間を掛けずにできませんかというのがフィンテックだ。操作が簡単で、かつ、セキュリティに守られているプラットフォームをどのように作るのかが、重要なテーマだ」

――金融ビジネスを変える契機になるか。

「フェース・ツー・フェースのビジネスと、利便性の高いプラットフォームのビジネス。金融は大きく2つのパートに分かれる。そのどちらかに重心を置いた、あるいは両方をやる金融機関の姿に変わっていくと思う。この数年で(金融ビジネスは)大きく変わるだろう」

――邦銀はこの取り組みが遅れていたか。

「先進国ではないのは確かだ。日本では銀行法により、できる範囲が絞られていたので、IT的なビジネスに乗り出すことが難しかった。これを言い訳にしてきた面もある。早ければ来年3月に銀行法改正が上程されると理解している」

――出資などを進めるのか。

「担当部署には、ネットワーキングが重要と伝えている。異業種のアイデアをどのように取り入れていくのかが大切だ。自前でやるのは限界がある。提携でも出資でも、子会社にしてもいい。それはバリュエーションの1つだと思う」

「これまでに成長企業向けビジネスを強化してきており、株式公開を控えた企業との関係も深まっている。すでに1000社ぐらいの付き合いある。そうした企業に対して有利な条件での融資や、大企業とのアライアンスの紹介もしてきた。その中には、優れたIT企業もある」

――国際金融規制の動きをどのようにみているか。

「世界の規制強化の流れは止まっていない。資本を大きく使うような買収は、規制の影響を見極めるまでは残念ながらトライしにくい。投資家からは、もっと株主還元してくれとも言われるが、規制の行方が見えない間は慎重なスタンスを取らざるをえない」

「規制次第では、これからリスクアセットが増えてしまう可能性がある。今のビジネスを進めていって、将来的に十分な自己資本の水準に到達できるという確信が持てるようになってくれば、株主還元や買収などのいろんな判断がしやすくなると思う」

(布施太郎 編集:田巻一彦)

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