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焦点:東芝子会社がインド原発受注へ、中ロ躍進で先行き懸念も
12月24日、東芝傘下の原子力事業子会社、米ウエスチングハウスがインドで原子炉6基を受注する可能性が高まっている。写真は東芝の室町社長、21日撮影(2015年 ロイター/Thomas Peter)
[東京 24日 ロイター] - 東芝<6502.T>傘下の原子力事業子会社、米ウエスチングハウス・エレクトリック(WH)がインドで原子炉6基を受注する可能性が高まっている。不正会計問題に揺れる東芝にとっては久々に明るい話題となるが、市場環境が変化する中で、原発事業の霧が晴れたわけではない。
<インド受注ほぼ確実か>
東芝は11月、2014年度━2029年度の15年間で、原発の新規建設64基の受注を目指す計画を公表した。このうちインドでは6━12基の受注を目指していたが、インド政府高官はロイターに対して、ウエスチングハウスに6基を発注する可能性を示唆した。
インドをめぐっては、ウエスチングハウスのダニエル・ロデリック社長もロイターとのインタビューで受注に自信を示していた。双方の前向きなコメントが揃ったことで、契約はほぼ確実になったとみてよさそうだ。
東芝によると、1基あたりの受注額は、設計から建設まですべて請け負うEPC契約の場合、約20億ドル(約2400億円)にのぼる。6基ともEPC契約とは限らないため、受注総額は単純に6倍となるわけではないが、仮に受注できれば巨額な契約になることは間違いない。
原子炉メーカーのインド進出をめぐっては、原発事故が起こった際にメーカーにも賠償責任を負わせる原子力損害賠償法の存在がネックとなっていたが、先のインド政府高官によると、インドは数週間以内に原子力損害の補完的な補償に関する条約(CSC)を批准する見通しで、最後のハードルも越えたようだ。
CSCは署名国に対し、原子力事故の賠償責任を事業者のみに集中させ、補償基金へのアクセスを認める。
<立ちはだかる中ロの原発事業>
インドの受注可能性が高まったことで、東芝にとっては目先は追い風となるが、長い目で見ると原発事業にはやはり不確実性が残る。ロシアと中国の台頭で、業界地図が塗り替わる可能性があるためだ。
アジアでエネルギー関連のコンサルティングなどを手掛けるテピア総合研究所の窪田秀雄主席研究員は「いま世界の原子力市場で、一番実績をあげているのはロシアで、これからロシアの競争相手になるとみられているのが中国だ。ロシアと中国が市場を席巻するのではないか」と指摘。その上で、向こう15年間で64基の目標について「非常に難しい」との見方を示した。
中国は他国の技術を取り込みながら低価格を武器に原発の輸出を強化しており、ロシアも価格で優位に立っているという。先進国が原発の建設に慎重になる中で、成長が見込める新興国でのビジネスは「価格」が大きな武器となる。両国がウエスチングハウスの前に立ちはだかってもおかしくない。
中国国内でのビジネスにも不安要素がある。ロデリック社長は自信のある受注先として中国30基、インド6━12基、英国3基、ブラジル6基などを挙げるが、米ゼネラル・エレクトリック(GE)
中国はウエスチングハウスの加圧水型原子炉「AP1000」をベースに独自規格の原子炉を開発した。窪田氏は「よほどの途上国でない限り、自分のところでつくりたいのではないか。技術だけもらって、最初の数基は完全に輸入するが、それ以降については国内産業の育成も考えていると思う」と話す。
市場環境の変化だけでなく、同社の資金繰りも気がかりだ。東芝は仏エネルギー大手エンジー(旧GDFスエズ)
財務状況が悪化するなか格付けも下がっており、東芝の資金調達環境は厳しさを増している。業界では、英原発プロジェクトも自社で負担すべき資金の肩代わり先を探る動きに出たとの見方も出ており、不透明感をぬぐえない。
(山崎牧子、志田義寧 協力:浜田健太郎)