ニュース速報

ビジネス

アングル:アジアでIPO活発化、中国企業の資金需要根強く

2015年11月05日(木)16時32分

 11月5日、日本郵政の総額120億ドル規模のIPOに支援され、第4・四半期のアジアでのIPOは360億ドルに上る可能性がある。都内で4日撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

[香港 5日 ロイター] - 中国本土のIPO市場は凍結された状態にあるが、資金を必要とする中国企業を中心に香港など他のアジア市場での新規株式公開(IPO)が活発化している。

中国経済が減速するなか、IPOのバリュエーションは割安になっているものの、案件の伸びは加速している。ロイターの推計によると、11─12月にアジアで今後予定されるIPOは170億ドルで、特に香港の案件は倍近くに増加する見通し。

日本郵政の総額120億ドル規模のIPOに支援され、第4・四半期のアジアでのIPOは360億ドルに上る可能性がある。トムソン・ロイターのデータによると、これは中国経済が好調だった2010年第4・四半期(762億ドル)以降で最も高い水準。

モルガン・スタンレー(香港)のアジア太平洋株式資本市場共同責任者、ミル・チェン氏は「すべての案件は中国の景気減速を念頭にマーケティングが行われている。投資家は資本を活用したいが、慎重姿勢を崩していない」と指摘した。

IPOやその他の株式取引の引受業務は、アジアでは投資銀行の収入の約半分を占め、米国の20%、欧州の19%と比べて重要度が高い。

低調だった第3・四半期を踏まえると、IPOの活発化はアジアのバンカーにとって朗報だが、中国の景気減速という新たな現実を受け、2016年初めに予定されるIPOは安定企業の案件でさえ、控えめな見通しを背景に、低いバリュエーションを反映したものになると彼らは身構える。

香港株式市場のハンセン指数<.HSI>は4月下旬につけた年初来高値を19%下回っている。

モルガン・スタンレーのチェン氏は「センチメントは改善しているが、まだ完全には回復していない」と指摘した。

<選別する投資家>

韓国、オーストラリア、タイのIPO市場は年末まで比較的安定した水準で推移するとみられるものの、香港では、中国再保険<1508.HK>や中国華融資産管理<2799.HK>といった事業拡大に向け資金調達を目指す本土企業を中心にIPO案件が膨らんでいる。

先週末には中国の大手投資銀行、中国国際金融有限公司(CICC)<3908.HK>が香港市場でのIPO価格を仮条件レンジの上限で決定し、8億1100万ドルを調達する見込みとなった。

ただ、投資家の需要はあるものの、選別する動きも見られ、景気減速への対応力がある大手企業でさえ、譲歩を迫られる場合がある。

映写システムを手がけるIMAX中国<1970.HK>は先月、香港でのIPOで2億4800万ドルを調達したが、公開価格は仮条件レンジの下限付近となった。トムソン・ロイターのデータによると、これに基づくと同社の2015年の株価収益率は24倍で、セクターの中央値32倍を下回る。

中国本土のIPO市場が規制強化で7月以降凍結された状態にある中、香港市場では中国の菓子・飲料会社、達利食品集団による最大13億ドルのIPOや中国能源建設の20億ドル規模のIPOなどが予定されている。

ゴールドマン・サックスのアジア株式資本市場(日本を除く)担当責任者、ジョナサン・ペンキン氏は「市場のパフォーマンスは夏場の低水準から改善している。企業はさらなる改善を待つのではなく、この機会を利用してIPOを実施しようとしている」と指摘した。

*写真を追加します。

(Elzio Barreto記者、Denny Thomas記者 翻訳:佐藤久仁子 編集:加藤京子)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB忍耐必要、6月までの政策変更排除せず=クリー

ワールド

ロシア、北朝鮮製ミサイルでキーウ攻撃=ウクライナ軍

ビジネス

関税の影響見極めには年後半までかかる─ウォラーFR

ワールド

トランプ氏「中国を債務不履行にすべき」、ボーイング
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 2
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 3
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 6
    謎に包まれた7世紀の古戦場...正確な場所を突き止め…
  • 7
    「地球外生命体の最強証拠」? 惑星K2-18bで発見「生…
  • 8
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航…
  • 9
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中