ニュース速報

ビジネス

独ボッシュのソフトに不正改変なし、VWが独断で書き換えか

2015年10月08日(木)12時27分

 10月7日、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が排ガス規制を不正に逃れていた問題で、VWを含む自動車大手のディーゼル車に使われていた独自動車部品大手ボッシュのエンジン制御ソフトは書き換えられていないことが分かった。写真は同社の本社ビルに掲げられたロゴ(2015年 ロイター/Axel Schmidt)

[デトロイト/ワシントン 7日 ロイター] - 独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が排ガス規制を不正に逃れていた問題で、VWを含む自動車大手のディーゼル車に使われていた独自動車部品大手ボッシュ[ROBG.UL]のエンジン制御ソフトは書き換えられていないことが、7日までに分かった。

米環境保護局(EPA)などが明らかにした。

EPAによると、ダイナモメーターと呼ばれる装置で車両が検査を受ける際に、排ガス浄化機能が働くように、VWがエンジン制御ソフトを書き換えていたという。

独ダイムラーのメルセデス・ベンツもボッシュのエンジン制御プログラムを採用しているが、6日夜に発表した声明で「ベンツのディーゼル車には、検査を検知できるソフトは使われていない」と強調した。

同じくボッシュのソフトを搭載している独BMWも7日、車両に用いられている排ガス制御装置は検査時と実走行時の両方で機能を発揮していると発表した。

ボッシュは「EDC17」と呼ばれるディーゼルエンジン制御システムや、北米で販売されているほぼすべての4気筒ディーゼルエンジン車向けの基本制御ソフトを供給している。このため、VWの不正を調べている米国の議員らは、他の自動車メーカーも、各州や連邦の排ガス規制を容易に回避可能ではないかとの問題点を挙げている。

さらに、米下院エネルギー・商業委員会の監視・捜査小委員会に近い関係者によれば、ボッシュの基本エンジン制御ソフトなどが検査モードを検知できるよう自動車メーカーによって簡単に書き換え可能であるという証拠は、現在の排ガス検査のあり方を変える必要があるのではないかという課題を浮き彫りにしているという。

ボッシュは6日の発表文で、エンジン制御システムなどの部品は、各メーカーの仕様に沿って供給しており、「部品がどのように測定され、完成車のシステムにどのように統合されるかは各メーカーの責任において行われている」と説明した。

ただ今回の不正に関し、ボッシュが正確にどのうような役割を果たしていたのか、VWによるエンジン制御ソフト書き換えにどれほど密接に関わっていたのか、VWが不正目的でソフトを使うことを把握していたのかどうかははっきりとしていない。

一方、自動車の排ガス規制をめぐる「無効化機能」に関する行政上の懸念は、ニクソン政権時代までさかのぼる。EPAは1972年、自動車メーカーに対し、車両の排ガス制御機能を損なう可能性がある「センサー・機能」の使用禁止を通達している。

ただミシガン大の自動車工学課程のディレクター、ジム・フローデンベルク氏によると、エンジンの性能や燃費を調整するため、実走行状況を自動的に検知するソフトは今の車に普及している。

フローデンベルク氏は「誰だって道のど真ん中で車が止まってしまうのは嫌だ」とした上で、「そうならないように、エンジン制御ソフトは燃料をより多く噴射する方がましだと判断する」と説明した。

こうした柔軟性によって、各メーカーは自動車の排ガス対策と燃費を飛躍的に向上させることができるようになったという。もっともフローデンベルク氏は「こうしたことは、明らかにEPAを欺くといったことにも使える」と話した。

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

メキシコCPI、12月は前年比+4.21%に鈍化 

ワールド

中国人民銀、国債購入を一時停止 供給不足で

ワールド

印TCSの10─12月業績は予想に届かず 次期米政

ワールド

中国主席、トランプ氏就任式にトップレベルの特使派遣
MAGAZINE
特集:中国の宇宙軍拡
特集:中国の宇宙軍拡
2025年1月14日号(1/ 7発売)

軍事・民間で宇宙覇権を狙う習近平政権。その静かな第一歩が南米チリから始まった

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」
  • 3
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映像に「弾薬が尽きていた」とウクライナ軍
  • 4
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 5
    仮想通貨が「人類の繁栄と自由のカギ」だというペテ…
  • 6
    トランプさん、グリーンランドは地図ほど大きくない…
  • 7
    「ポケモンGO」は中国のスパイ? CIAの道具?...大人…
  • 8
    大河ドラマ『べらぼう』が10倍面白くなる基礎知識! …
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    いち早く動いたソフトバンク...国内から「富の流出」…
  • 1
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵の遺族を待つ運命とは? 手当を受け取るには「秘密保持」が絶対
  • 2
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 3
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流行の懸念
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映…
  • 7
    仮想通貨が「人類の繁栄と自由のカギ」だというペテ…
  • 8
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「日本製鉄のUSスチール買収は脱炭素に逆行」買収阻…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 7
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 8
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 9
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 10
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中