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アングル:中国「シルクロード構想」、日本株の将来の重しにも

4月13日、中国が進める「シルクロード構想」が日本株にとって重しになりかねないと懸念されている。写真はアジアインフラ投資銀行への式典に参加した各国代表と習近平国家主席(前段中央)。昨年10月代表撮影(2014年 ロイター)
[東京 13日 ロイター] - 中国が進める「シルクロード構想」が、日本株にとって重しになりかねないと懸念されている。中国政府が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対し、創設メンバー参加を日本が見送ったことで、拡大が予想されるアジアのインフラ需要をめぐって「蚊帳の外」に置かれるとの不安感が出てきたためだ。足元の日経平均<.N225>は堅調だが、先行きは「黄砂」に覆われたように不透明だ。
<関連株の動きはまちまち>
「シルクロード(一路一帯)構想」は、中国の習近平国家主席が今年3月の全人代(全国人民代表会議)で、前面に打ち出した戦略的な対処方針だ。アジアと欧州の陸(一路)と海(一帯)を結ぶ経済圏を対象に、中国が中心となってインフラなどを整備・開発するという壮大な計画。
途上国のインフラ建設には、2020年までに8兆ドルの資金が必要だとの試算もある。その資金源として見込まれているのがAIIBだ。
株式市場の一部では、創設メンバーとしてAIIBに参加することを日本が見送ったことで「巨大需要を生み出す市場の『蚊帳の外』に置かれてしまいかねない」(国内証券の中国担当アナリスト)との懸念が広がっている。
ただ、現時点でマーケットへの直接のインパクトは大きくない。日経平均は10日、15年ぶりに2万円を一時突破した。
英国が3月12日にAIIBの創設メンバーへの参加を表明したことが、AIIBの存在感を一段と高めるきっかけになったが、国内重電株の同日の終値と比較した変化率は、前週末までに日立製作所<6501.T>が1.3%高、東芝<6502.T>が1.4%高、三菱電機<6503.T>が7.8%高となっている。
建機株ではコマツ<6301.T>が0.3%高なのに対し、日立建機<6305.T>が1.6%安とまちまち。AIIBに対する欧州各国の姿勢変化が、日本の関連株に及ぼした影響は、今のところ限定的といえそうだ。
大和証券・シニアストラテジストの高橋卓也氏は「特段、現在の日本の株式市場に影響は与えていない」と指摘。新規受注案件が獲得できないなどの事態が仮に出てくるのであれば、個々の企業やセクターに対する重しとなることもあり得るとする一方、「日本がAIIBに参加しても、透明性のある運営ができない可能性もあり、創設メンバーに入らなかったことが、100%だめなのかということも断言しがたい」と話す。
<急騰するアジアのインフラ株>
ただ、株価が堅調だからといって安心してはいられない。同期間における中国株式市場でのインフラ株の上昇は顕著で、建設機械大手では三一重工<600031.SS>、中聯重科<000157.SZ>がともに20%超の上昇となっている。
もっとも上海総合指数<.SSEC>も同程度の上昇率となっているほか、三一重工、中聯重科などは、2013年春の株価水準に戻したに過ぎない。成長率が鈍化する中国市場の先行きには警戒感が根強いが、「だからこそアジアでの成長を取り込もうとしている」(SMBC日興証券・投資情報室中国担当の白岩千幸氏)とみられている。
丸三証券・経済調査部長の安達誠司氏は「中国は人民元を含めて対外開放路線に転換し、アジア全体のイニシアティブを採る戦略に変わろうとしている」としたうえで、「成功するかどうかは時間をかけて見極めていくことになるが、こうした路線がポジティブに評価されることで、便乗する欧州株がアウトパフォームする展開も予想できる」との見方を示す。
AIIBの創設メンバー入りを見送った日本政府は、今後の対応について検討を進めている。株式市場だけでなく企業側からも「関心を向けざるを得ないが、今すぐに何か対応するということもできない話」(プラントメーカー関係者)との声が出ており、当面は企業サイドも動向を見守る局面が続きそうだ。
(長田善行 編集:田巻一彦)