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米利上げ開始なら、国際的な資金巻き戻し注視必要=日銀議事要旨

2015年04月13日(月)10時56分

 4月13日、日銀が公表した3月16、17日の金融政策決定会合の議事要旨によると、何人かの委員が、米国が実際に利上げを開始した場合、国際的な資金フローの巻き戻しに注視が必要との認識を示した。日銀本店。8日撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 13日 ロイター] - 日銀が13日に公表した3月16、17日の金融政策決定会合の議事要旨によると、何人かの委員が、米国が実際に利上げを開始した場合、国際的な資金フローの巻き戻しに注視が必要との認識を示した。

先行きの物価動向では、多くの委員が2015年度を中心とする期間に2%程度に達するとの見方を共有する一方、物価の基調の高まりを疑問視する声もあった。

<金融政策の方向性、「違い大きくなっている」>

会合では先進国を中心とした各国の金融政策について、市場で米国の利上げ開始時期に注目が集まる一方、欧州など多くの国々で低インフレを背景とした金融緩和が行われていることから、政策委員は「金融政策の方向性の違いが大きくなっている」との認識を共有した。

そのうえで何人かの委員は、実際に米国が利上げを開始した場合、「国際的な資金フローが巻き戻される可能性があり、その影響について注視する必要がある」と表明。このうち複数の委員は、金融規制の影響もあり、「マーケットメーカーのリスクテーク能力が低下している可能性がある」ことを指摘した。

また、多くの委員がギリシャ問題について、支援プログラムが延長されたものの、「ギリシャの金利は依然として高止まりしており、先行きの協議の行方などには注意が必要」との見解を示した。

<ある委員、コアコアCPIもプラス幅拡大してない>

金融政策運営を行ううえで重要な物価動向に判断については、あらためて「物価の基調的な動き」が重要との認識を共有。この点についてある委員は「先行き消費が持ち直していけば、値上げ予備軍からの値上げ圧力が再び顕現化してくる可能性が高い」とする一方、「賃金面では、ベースアップにちゅうちょする企業がみられるなど、デフレ的な意識が根強い」とも発言している。

多くの委員は、物価の基調を規定する需給ギャップや予想物価上昇率の改善に伴って、先行きの消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)は伸び率を高め、「2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高い」との見方を共有した。ただ、ある委員は、食料とエネルギーを除いたいわゆるコアコアCPIもプラス幅を拡大していないとし、「先行きの物価上昇率はなかなか高まらない」と述べている。

<債券市場の流動性、大きく低下してない>

会合では、日銀が大規模な国債買い入れを続ける中で、国債市場の機能や流動性についても議論が行われた。日銀が3月9日に公表した「債券市場サーベイ」で示された市場参加者からの機能や流動性の低下に対する懸念について、複数の委員が「流動性プレミアムを相応に意識している可能性がある」と指摘。別の複数の委員は、足元の国債金利のボラティリティの上昇が影響している可能性があるとの見方を示した。

それでも、こうした委員は「現時点で債券市場の流動性に大きな問題が生じているわけではない」とし、何人かの委員が「今後も市場関係者との対話を行いながら、債券市場の動向を注意深く点検していくことが重要」との見解を示した。

(伊藤純夫 編集:吉瀬邦彦)

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