ニュース速報

ビジネス

アングル:香港株買い漁る本土マネー、相互接続や規制緩和が追い風

2015年04月09日(木)13時02分

4月8日、中国のファンドが本土に比べて割安な香港株を買い漁っている。香港証券取引所で3月撮影(2015年 ロイター/BOBBY YIP)

[上海 8日 ロイター] - 中国のファンドが、本土に比べて割安な香港株を買い漁っている。深センと香港の株式相互取引が今年始まるのに加え、中国の機関投資家による香港株投資の規制緩和をてこに、裁定取引で2桁どころか3桁の利益を簡単に実現できるとにらんでいるようだ。

8日には上海と香港市場の株式相互取引で、中国本土からの香港株投資が8日、1日あたりの限度額である105億元(約16億9000万ドル)に到達した。投資枠を使い切るのは初めて。

これを追い風に香港のH株指数<.HSCE>は5.8%上昇し、香港証券取引所の出来高は過去最高を記録した。深センと香港の株式相互取引により、本土からの投資が認められる見通しの中小型株はさらに堅調で、成長企業市場(GEM)<.SPHKGEM>指数は先週10%超上昇し、過去6年ほどで最高の上昇率となった。

中国本土株はここ1年で大幅上昇したが、香港市場にはほとんど波及していない。

中国の滬深300指数<.CSI300>は8日までの過去1年間で92%上昇したのに対し、香港H株指数は29.8%の上昇にとどまった。

この結果、中国香港株価プレミアム指数で見ると、本土の優良株は香港の優良株に対して約33%割高となっている。本土と香港市場に二重上場する小型株の場合、本土株の方に10倍のプレミアムが付いている。

<価格差>

上海のヘッジファンド、六合投資のXia Xiaohui会長は「これほど大きな価格差がある時に香港株を買わない手はない。同じ企業の株ならなおさらだ。2市場の接続が進む中で、これは明白な裁定機会だ」と話す。

上海市場と香港市場の相互接続が始まる前にも同様の裁定機会が期待されたが、これは幻に終わった。本土の個人投資家が香港株投資に後ろ向きだったため、昨年11月の開始以来、本土株のプレミアムは縮小するどころか拡大した。

しかし今回は様相が異なるかもしれない。中国当局は3月末、本土の投資信託が仲介者を通して香港株に投資することを認め、数日後には保険会社による香港のGEM上場株の購入を認めた。

5兆元(8073億6000万ドル)に及ぶ本土の投資信託業界は、既に香港株投資に乗り出している。

<水は低きに>

ボルセラのファンドマネジャー、Zhang Xigang氏は、「水は低きに流れる」とし、中国の投信マネーが香港にあふれ始めると予想する。

UBSのストラテジスト、Lu Wenjie氏は、中国の中小型株の株価収益率(PER)が平均100倍前後なのに対して、香港では10倍だと指摘。本土株は成長を伴わないバブルの様相を呈しているが、香港株は割安なのに流動性を欠いているとの見方を示した。

(Samuel Shen、Pete Sweeney記者)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ヒズボラの武器倉庫など攻撃 レバノン

ビジネス

レバノンで爆発と報道の無線機は既に終売、自社出荷製

ビジネス

米カーライル傘下のリガク、10月に東証上場 時価総

ビジネス

KKR、富士ソフトへのTOBを2段階に 2回目も1
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    クローン病と潰瘍性大腸炎...手ごわい炎症性腸疾患に高まる【新たな治療法】の期待
  • 2
    「ポケットの中の爆弾」が一斉に大量爆発、イスラエルのハイテク攻撃か
  • 3
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...視聴した「禁断の韓国ドラマ」とは?
  • 4
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 5
    浮橋に集ったロシア兵「多数を一蹴」の瞬間...HIMARS…
  • 6
    岸田政権「円高容認」の過ち...日本経済の成長率を高…
  • 7
    「トランプ暗殺未遂」容疑者ラウスとクルックス、殺…
  • 8
    地震の恩恵? 「地震が金塊を作っているかもしれない…
  • 9
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 10
    米大統領選を左右するかもしれない「ハリスの大笑い」
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢な処刑」、少女が生き延びるのは極めて難しい
  • 4
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 5
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 6
    クローン病と潰瘍性大腸炎...手ごわい炎症性腸疾患に…
  • 7
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...視聴した「禁…
  • 8
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 9
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰…
  • 10
    世界に離散、大富豪も多い...「ユダヤ」とは一体何な…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 4
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 5
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 6
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 7
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 8
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 9
    止まらない爆発、巨大な煙...ウクライナの「すさまじ…
  • 10
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中