ニュース速報

ビジネス

焦点:政府試算の春闘ベア、前年比0.5%増程度 景気好循環に不安

2015年04月03日(金)16時15分

 4月3日、内閣府が今週初めに公表した今年の春闘におけるベースアップ率の試算によると、0.5%程度と前年実績の0.39%ををやや上回る程度に伸び悩む見通しだ。都内で3月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 3日 ロイター] - 内閣府が今週初めに公表した今年の春闘におけるベースアップ率の試算によると、0.5%程度と前年実績の0.39%ををやや上回る程度に伸び悩む見通しだ。

連合によれば、ベースアッップ実施企業は増加し、賃上げの裾野は広がっているが、政府・日銀の期待値とはかい離が生じており、政府部内には経済の好循環や物価上昇につながるか、不安も漂い出した。

この試算結果は、内閣府が3月30日に公表した「今週の指標」の中で公表。連合の第2回集計結果をベースに、最終結果への変化率が前年と同程度になるとの前提で算出した。

それによると、定期昇給を含めたベースでは、昨年の2.07%から伸びて、2.2%程度になると予想している。

一方、ベースアップは、昨年の0.39%に対し、今年は0.5%程度となりそうだとしている。

連合が今年の春闘で掲げた目標は、2%のベースアップ。政府や日銀では当初、ボーナスや手当なども含め、連合目標の半分程度にあたる1%のベースアップを期待していたもよう。

3月18日の集中回答日にトヨタ自動車<7203.T>など大手企業が、期待を上回る妥結額を提示。その段階では、0.7%程度にベースアップが着地することを期待する声が、政府部内にはあった。

だが、内閣府試算の結果は、こうした期待を下回ることを示した。政府部内では「好結果になるかどうかわからない」と不安の声も聞かれている。昨年より高いベースアップを起点に、景気の好循環を目論んでいた政府にとって、伸び悩みとなった賃上げの実態は、景気の先行きに不安感を抱かせることになったようだ。

連合ではその後、第3回目の集計を3月31日に発表。より規模の小さい企業が加わり、第2回よりも賃上げ率は低下した。2003組合の平均は、定期昇給込みで2.33%の6944円となった。

このうち、1224組合で判明したベースアップ率は0.68%。いずれも、今のところ内閣府試算を上回っているが、妥結組合は全体の約3割で、賃上げ率は今後、低下していくことが予想されている。

だが、連合によれば、昨年に比べてベースアップ実施に踏み切る企業は増えている。中小企業にもベースアップは広がりを見せている。

中小の金属機械製造業の労働組合を傘下に抱える「ものづくり産業労働組合」(JAM)では「要求額に比べれば妥結額は高くはないとしても、昨年よりは最終的に高い金額で着地する可能性がある。また、ベア実施企業の裾野も広がっている」(広報)として、賃金底上げにつながっていると分析している。

(中川泉 編集:田巻一彦)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:インド中間層、インフレで支出切り詰め 経

ビジネス

米国株式市場=続落、FRBのタカ派的発言とトランプ

ワールド

ロシア、濃縮ウランの対米輸出を制限 原発に供給リス

ビジネス

NY外為市場=ドル軟調、米金利見通し見直す動き
MAGAZINE
特集:またトラ
特集:またトラ
2024年11月19日号(11/12発売)

なぜドナルド・トランプは圧勝で再選したのか。世界と経済と戦争をどう変えるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制度を利用するため彼らはやって来る
  • 4
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 5
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 6
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 7
    投資家は「東京メトロ」をどう見るべきか...「今さら…
  • 8
    新たな大谷翔平伝説が始まる...「ますますリスペクト…
  • 9
    「ワキ汗」は健康の問題、ひとりで悩まないで──ジェ…
  • 10
    世界の若者を苦しめる「完璧主義後遺症」...オードリ…
  • 1
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 2
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 3
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラッドレー歩兵戦闘車が「戦略的価値を証明」する戦闘シーン
  • 4
    ウクライナ軍ドローン、1000キロ離れたロシア拠点に…
  • 5
    本当に「怠慢」のせい? ヤンキース・コールがベース…
  • 6
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 7
    NewJeansのミン・ヒジン激怒 「似ている」グループは企…
  • 8
    「歌声が聞こえない」...ライブを台無しにする絶叫フ…
  • 9
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 10
    海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「空母化」、米…
  • 1
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 2
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 7
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 8
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    予算オーバー、目的地に届かず中断...イギリス高速鉄…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中