ニュース速報
ビジネス
焦点:イラン核枠組み合意、年内の石油輸出増は見込み薄
4月2日、欧米など6カ国とイランは、イラン核問題の包括解決に向けた枠組みに合意。写真はローザンヌで記者会見するケリー国務長官、2日撮影(2015年 ロイター/Brendan Smialowski)
[ワシントン/ニューヨーク 2日 ロイター] - 欧米など6カ国とイランは2日、イラン核問題の包括解決に向けた枠組みに合意。ウラン濃縮活動を制限することなどが盛り込まれており、履行が確認されれば対イラン制裁は解除され、イランは世界の石油市場に復帰できる。ただ、それが年内に実現する可能性はごく小さいようだ。
今回の合意はあくまでも「枠組み合意」に過ぎず、6月末の最終合意を目指す。対イラン制裁が解除されるには、イランが条件を履行していることを欧米が確認する必要があることから、イランの石油輸出が目に見えて増加するのは、早くとも2016年以降になると見られる。
原油市場では、イラン制裁解除を見越した売り圧力が強まり、北海ブレント原油先物
ブッシュ前米大統領のアドバイザーを務め、現在は米エネルギーコンサルタント会社ラピダン・グループ社長のボブ・マクナリー氏は、イランの履行状況の検証には「最終合意後に長い時間が必要。その最終合意にしても、目標の6月末からずれ込む可能性がある」と指摘した。
オバマ大統領の元アドバイザーで、 コロンビア大学グローバルエネルギー政策センターの創設ディレクターであるジェイソン・ボードフ氏も同意する。「イラン産原油が世界市場に帰ってくるには時間がかかる。早くとも2016年以降になるのではないか」との見方を示した。
イランの石油輸出増が遅れれば、サウジアラビアやイラク、その他の石油輸出国機構(OPEC)加盟国にとっては朗報だ。OPECは、イランの石油生産が急速に回復すれば、供給過剰を背景に昨夏から半分の水準に下落した原油価格に、一段の圧力がかかると警戒している。
OPECは6月5日、生産据え置きを決定した昨年11月以降で初の総会を開く。世界の石油需要は想定よりも速いペースで回復し、米国のシェール生産の伸びが急速に鈍化するなかで、イランという新たな不透明要因が加わることになる。OPECは難しい判断を迫られそうだ。
石油アナリスト、ジム・リッターブッシュ氏は「枠組み合意は今四半期いっぱい、石油市場に垂れ込めることになるだろう」としている。
<早期の制裁解除は見込めず>
枠組み合意によると、米国と欧州連合(EU)による対イラン制裁が停止されるのは「イランが核関連の主要なステップをすべてとったことが」国際原子力機関(IAEA)によって確認された後。「イランが履行していないことが判明すれば、制裁はすぐ再開される」という。
専門家の大半は、制裁解除後6カ月でイランの石油輸出は日量20万─60万バレル増加する、と予想。ブルッキングス研究所でエネルギー安保・気候変動問題を専門とするアクティングディレクター、ティム・ブルスマ氏は、90日以内に日量50万バレル増も可能と見る。
ただ、新規投資などが必要となるため、イランの石油生産が完全に回復するのは早く見積もっても2016年下半期以降と見られている。
エネルギー・アスペクツのアナリストらは2日、リサーチノートのなかで「6月に最終合意の調印にこぎつけたとしても、その後6カ月か1年の間に制裁が解除されるとは考えにくい」との見方を示している。
原油価格は、今回の急落が始まる前の数年ほどの間、1バレル=100ドル付近で推移していたが、対イラン制裁が価格下支えの役割を果たしていた。今回の合意を受けイランの役割は一変するかもしれない。
ロジウム・グループのパートナー、トレバー・ハウザー氏は「イランの原油輸出が回復するには、時間がかかるかもしれないが、今回の合意で石油価格の上昇余地が一段と狭まったことは確かだ」と述べた。
(Timothy Gardner記者、Jonathan Leff記者 翻訳:吉川彩 編集:吉瀬邦彦)