ニュース速報

ビジネス

原油安、中長期の予想物価に影響すれば政策対応必要=日銀副総裁

2015年03月09日(月)13時18分

 3月9日、中曽宏日銀副総裁は松山市内で講演し、原油価格の動向次第で日銀が目指す物価2%の到達時期が多少前後する可能性があるが、重要なのは「物価の基調」と語った。都内で2013年3月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai )

[松山市 9日 ロイター] - 中曽宏日銀副総裁は9日、松山市内で講演し、原油価格の動向次第で日銀が目指す物価2%の到達時期が多少前後する可能性があるが、重要なのは「物価の基調」と語った。金融政策が原油安に機械的に対応することはないとの認識を示したが、中長期的な予想物価上昇率に影響を与える場合は対応が必要と述べた。

中曽副総裁は、昨夏以降の急激な原油価格の下落が経済・物価に与える影響について、短期的には物価上昇率を引き下げるが、エネルギー価格の下落によって企業収益や家計の購買力が高まるとし、「やや長い目でみると経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に働く」と語った。

具体的には、原油価格が昨夏の1バレル100ドル程度から同50ドル程度まで下がれば、2013年度の原油輸入額15兆円弱をもとに、「ごく単純に計算して、年間7兆円を上回る所得移転が国内にもたらされる」との試算を示した。

このため、原油安を受けていったん物価上昇率が鈍化しても、それが予想物価上昇率に影響を与えず、物価が基調的に2%に向かっているのであれば「金融政策で対応する必要はない」と指摘。一方で、原油安が中長期的な予想物価上昇率に影響を与え、「先行き2%の実現が難しくなるとみられる場合には、金融政策による対応が必要になる」と語った。

再び物価が上昇に転じるタイミングについては「来年度後半は原油価格の影響がはく落するに伴って伸び率を高めていく」との見方を示し、「2015年度を中心とする期間」に2%程度に達するとの見通しを示した。原油価格の動向次第では「2%に達する時期が多少前後する可能性はある」としたが、「重要なのは物価の基調」と強調。物価の基調に変化が生じ、「物価2%目標の早期実現に必要であれば、調整を行う」との考えをあらためて示した。

中曽副総裁は、一昨年4月に導入した「量的・質的金融緩和」(QQE)は「所期の効果を発揮している」とし、この間、「デフレマインドの転換は着実に進んでいる」と主張。日銀が目指しているのは「物価だけが上がる世界ではない」とし、「企業収益や賃金の増加を伴いながら経済が拡大し、そのなかで2%の物価安定目標が実現される世界だ」とも語った。

先行きの日本経済については「緩やかな回復基調を続けていく」とし、企業収益も「これまでの原油価格下落や為替円安も押し上げに寄与してくるなかで、改善傾向を続けていく」と展望した。足元で輸出が2四半期連続で増加するなど持ち直しの動きが出ていることに関して「為替円安による数量効果がようやく出てきた」との認識を示した。

*本文の一部を補足して再送します。

(伊藤純夫 編集:宮崎大)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国財政相会見、刺激策の「規模」不明 市場の期待は

ビジネス

情報BOX:中国、景気底上げへ積極財政出動 財政相

ビジネス

中国9月CPI減速、PPIは半年ぶり下落率 デフレ

ワールド

イスラエル、イラン攻撃目標を軍・エネ施設に絞り込み
MAGAZINE
特集:米経済のリアル
特集:米経済のリアル
2024年10月15日号(10/ 8発売)

経済指標は良好だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思っていたが......
  • 2
    ビタミンD、マルチビタミン、マグネシウム...サプリメント「3つの神話」の噓を暴く
  • 3
    東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパートに行って「ある作品」を作っていた
  • 4
    冷たすぎる受け答えに取材者も困惑...アン・ハサウェ…
  • 5
    アルツハイマー病治療に新たな可能性...抗がん剤投与…
  • 6
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 7
    メーガン妃とヘンリー王子は「別々に活動」?...久し…
  • 8
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはど…
  • 10
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロ…
  • 1
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 2
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた「まさかのもの」とは?
  • 3
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明かす意外な死の真相
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはど…
  • 5
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 6
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…
  • 7
    ウクライナ軍がミサイル基地にもなる黒海の石油施設…
  • 8
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
  • 9
    東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパ…
  • 10
    戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイス…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 4
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座…
  • 5
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 6
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 7
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 8
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
  • 9
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 10
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中