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ForeignPolicy.com 外交エディター24時
ソマリア・アルシャバブの二枚舌広報
崩壊寸前のソマリア暫定政府は今週、いつになく大量のプレスリリースを流して支援を求める見込みだ。そこにはソマリアで発生する数々の攻撃や戦闘の現状、治安の悪化などが書き込まれていることだろう。中でも最も興味をそそるのは、8月28日の発表資料。「アルシャバブが独自の報道体制を構築しつつある」というものだ。
今やソマリア南部の大半を手中に収めているイスラム武装勢力アルシャバブは、民間のテレビ局やラジオ局を略奪し、その施設を自らの宣伝に利用している、と説明している。加えて「アルシャバブはソマリア南部と中部の一部で、学校やモスク、セミナーを通じた伝統的なコミュニケーションの手法でも大量のプロパガンダを流し始めている」という。
これが何を意味するのかに興味を引かれ(そしてアルシャバブのような組織の情報発信法に好奇心をそそられて)、私は調査を始めた。コメントはオフレコでしか集められなかった。アルシャバブを批判する発言をする者は(あるいは単にアルシャバブについて語るだけでも)、執拗に脅迫を受けるからだ。そんな状況下でも、私は以下のような情報を得た。
アルシャバブは長い間、国際メディアとやり取りを続けている。テレビ会議を通して話すのが主で、まれに直接会って取材を受けることもある。報道官が1人いて、ジャーナリストとのインタビューをアレンジしている。彼らが世界に向けたメッセージは、各地に散らばるソマリア人の支持を得られるよう、報道官が補足したうえオンラインメディアで発信する。ネットを通じた支援者獲得のため、この作業にはとりわけ力を入れていると言われている。
だが地元住民に向けた彼らのメッセージはまた話が違う。アルシャバブのコミュニケーションの手段は、基本的には対面式の話し合い。特別な政策やメッセージ、時には刑罰の執行を知らせる手段として用いられてきた。
そういったとき、彼らはその時々の戦闘の実情や犠牲者の数などを巧みに話題に盛り込んだ。その結果、少なくとも首都モガディシオでは、人々の非難の矛先はもっぱら政府支援のため駐留していたアフリカ連合(AU)平和維持部隊に向けられた。
■国際社会と国内向けで使い分け
7月11日、ウガンダの首都カンパラのレストランでサッカーワールドカップ(W杯)観戦中の人など70人以上が死亡する連続爆破テロが起きた後、アルシャバブは世界に向けて犯行声明を行った。だが地元に人々に伝えたメッセージは実にシンプル。ウガンダ人の血が流れれば世界の注目が集まるが、ここソマリアで毎週数百人が死亡しようと国際ニュースになどならない、というものだ。
ジョージ・ワシントン大学国家防衛戦略研究所のダニエル・キメージによると、これはよく使われる戦略だという。国際社会向けと地元の人々向けで、まったく異なるメッセージを発信するというものだ。例えばイラクでは、イスラム過激派が国際社会にメッセージを発信する場合、「イスラム教徒とキリスト教徒の巨大な文明戦争」に焦点を当てる。その一方で、「地元の人々に向けては、例えば羊泥棒のようなちょっとした犯罪者に対して警告を発する程度だろう」
国際テロ組織アルカイダはこの構図にどの程度当てはまるのだろうか。アルシャバブはアルカイダとの連携を主張しているが、実際の従属関係は明らかになっていない。分かっているのは、キメージも指摘するように、アルカイダの「メディアセンター」ともいえるアルシャバブが、ソマリアのニュースを売り出し始めたということ。彼らは日々の事件を伝え、ジハード(聖戦)への参加を呼び掛けている。
そこから見えてくるのは、アルシャバブが主張するアルカイダとの連携が双方にとって重要な意味を持つ、ということ。つまり、アルシャバブがアルカイダを心から慕っているだけではなく、アルカイダもアルシャバブとの関係を同じくらい歓迎している、ということだ。
「アルカイダは系列組織からできるだけの宣伝効果を得ようとしている」とキメージは言う。「アルカイダの中枢は包囲され、ジハードに貢献できる人材は限られている」
残念なことに、その点はアルシャバブがいくらでも提供しているようだ。
──エリザベス・ディッキンソン
[米国東部時間2010年09月03日(火)17時12分更新]
Reprinted with permission from "FP Passport",7/9/2010.©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
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