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ForeignPolicy.com 外交エディター24時
この夏、冒険の尻拭いは自己負担で
Laurent Capmas-Reuters
フランス議会は現在、フランス人が旅行中に危険な目に遭い、救援された場合にはその費用を自己負担にするという法案を審議している、と英ガーディアン紙が報じた。もちろん、この法案が持ち上がった背景には、ソマリア沖にたびたび出没する海賊たちの存在がある。
旅行者の救援費用を負担することにうんざりしたフランス政府は、法案提出に踏み切った。法案が成立すれば、危険な地域に「正当な動機」もなく故意に侵入したと思われる旅行者に対し、政府は「国外での救援活動にかかった費用のすべてもしくは一部」の返済を求めることができる。
フランス外務省によると、世界中で誘拐やハイジャック、政情不安がはびこるなか、フランス人旅行者の間に「責任をもつ文化」を広めることが法案の狙いだ。救援に伴う緊急帰国費用などを自己負担する可能性を考えれば、人々は軽率に危険地域に踏み込みことはないだろうと、外務省は期待する。もちろん、身代金は自己負担費用に含まれない。フランスは、国家として身代金の支払いに応じることは絶対にないと主張しているからだ。
休暇中にトラブルに巻き込まれた旅行者を助ける場合、その費用は誰が負担すべきか――この議論に火を付けたのは、近年、フランス政府が国外で行っているいくつかの救援活動だ。
昨年は、ソマリア沖でフランス人が乗ったヨットが海賊に乗っ取られ、フランス軍特殊部隊が人質救出に駆り出された。この救出作戦中、人質だったヨットのオーナー、フローラン・ルマソンが銃弾を受けて死亡。ヨットの乗組員たちがこの地域の危険性について再度警告を受けていたにも関わらず航行を続けたと、フランス政府は憤慨した。
■ジャーナリストや救助隊員は例外か
ガーディアンによれば、ドイツには救援費用を請求できるような仕組みがすでにある。昨年は、コロンビアで人質になった女性バックパッカーが、救出時のヘリコプター輸送費用として1万2000ユーロ(当時のレートで約160万円)を政府から請求されている。
面白いことに、フランスは海で遭難した「外国人」の救出費用なら進んで負担するらしい。6月10日、世界最年少のヨット単独世界一周航海に挑戦していたアメリカ人のアビー・サンダーランド(16)がインド洋上で一時行方不明となった際には、フランス領レユニオン島から3隻の船が救出に向かった。フランスとオーストラリアによる共同救出作業には30万ドルかかったが、フランス外務省の報道官はサンダーランドが自己負担すべきとの考えを退け、「海で遭難した人を救うのは国際的な責務」だと述べた。
フランスの法案をめぐっては、ジャーナリストや民間の援助活動家にも適用されるかが争点の一つになっている。野党・社会党の議員は、ジャーナリストは法案の対象として明記されていないとしている。一方、ベルナール・クシュネル外相はケース・バイ・ケースで判断するが、誘拐されたり拘束されたジャーナリストに救援費用を請求するとは考えにくいと語った。
ジャーナリストや援助活動家の仕事に危険が伴うのは明らかだし、彼らを窮地から救うことは公共の利益にかなうと通常は考えられる。昨年8月、ビル・クリントン前米大統領の電撃訪問を受け、北朝鮮が拘束していたアメリカ人記者2人を解放した。彼女たちの救助はアメリカにとって、金正日(キム・ジョンイル)総書記との記念撮影という犠牲を払うに値するものだった。旅行者について、これとは別の基準があるというのは理解できる。アメリカでは、ハイキングで遭難して救助された際の費用が自己負担になることもある。
とはいえ、何を「不可避の危険」と見なすのかを訴訟によって決めることにでもなれば、救援費用より高くつくのではないか。
──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年07月06日(火)15時14分更新]
Reprinted with permission from "FP Passport", 07/07/2010. © 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
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