コラム

バキエフを匿うベラルーシの冒険

2010年04月21日(水)18時56分

 これは、とても興味深い話だ。


 ベラルーシで独裁体制を敷くアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は4月20日、「(中央アジア・キルギスの政変で辞任したクルマンベク・)バキエフ前大統領は家族と共に首都ミンスクに滞在しており、ベラルーシと私個人の保護下にある」と言った。だがバキエフの存在は、西側と隣国ロシアとベラルーシの関係を両方とも悪化させかねない。身柄の引き渡しを求めるであろうキルギスとの関係もだ。

 バキエフを保護することは、ロシアに公然と挑戦状を叩きつけるようなもの。多くの専門家によれば、ロシアはキルギスの政変を支持、いや支援さえしたと指摘する。バキエフが昨年、米軍が駐留するマナス基地を閉鎖する約束を反故にしたからだという。


 モスクワで反バキエフ派と会ったりテレビでバキエフ政権批判を行ったり、ロシアがキルギス政変前に果たした役割も次第に明らかになってきている。ロシアの勢力圏内にある他の専制国家はこれにどういう反応を示すのだろう。

 ルカシェンコ政権は、グルジアからの南オセチアとアブハジア自治共和国の独立を承認させようとするロシアの圧力に抵抗してきた。両地域はグルジアに属するとして独立を認めていないEU(欧州連合)とロシアを両天秤にかけてのことだ。

 ベラルーシの大統領選を来年に控え、ロシアはルカシェンコにも圧力をかけ始めるのだろうか。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年04月20日(火)12時19分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 20/4/2010. ©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏政策巡りインフレへの影響を懸念=FOMC

ビジネス

ウクライナ停戦なら近隣国通貨に「差し引きプラス」効

ビジネス

米国株式市場=小幅続伸、S&P最高値更新 FOMC

ビジネス

NY外為市場=ドル・円など安全通貨上昇、トランプ関
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「20歳若返る」日常の習慣
  • 4
    1月を最後に「戦場から消えた」北朝鮮兵たち...ロシ…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 7
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 8
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 9
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 8
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 9
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 10
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story