コラム

バイデン請け合い外交に信用危機

2009年10月21日(水)16時30分

 お気づきだろうか。ジョー・バイデン米副大統領の外国訪問を伝える記事は、ほとんど常に次の構文にあてはまる。「ジョー・バイデン副大統領は[同盟国の名前]を訪問した。[外交上の他の優先課題]にも関わらず、アメリカは彼らを見捨てたわけではないと相手国に請け合うためだ」

 ニューヨーク・タイムズ紙の実際の記事から見てみよう。


[10月20日] ジョー・バイデン副大統領は火曜、3日間の東欧訪問に出発した。オバマ政権は東欧ミサイル防衛の中止を決定したが、東欧のNATO(北大西洋条約機構)諸国を見捨てたわけではないことを請け合うためだ。




[7月5日] イラク訪問を締めくくるにあたりジョー・バイデン副大統領は、イラク政府首脳が非公式に口にした恐怖に言及した。オバマ大統領がアフガニスタンでの戦争などより喫緊の課題を優先し、イラクを「棚の奥底」に仕舞い込んでしまうことだ。

 バイデンは、そんなことはないと彼らに請け合ったと語った。




[6月22日]  ジョー・バイデン副大統領は、来月のオバマ大統領のロシア訪問後、旧ソ連のウクライナとグルジアを訪問する。ロシアと対立している両国に、オバマ新政権がロシアとの関係改善を進めていても、彼らを見捨てるわけではないと請け合うためだ。




[5月22日] ジョー・バイデン副大統領は金曜、7時間の滞在のためレバノンに到着した。中東和平交渉が将来いかなる展開になろうとも、小国ながら中東の要衝であるこの国を犠牲にすることはないとレバノン首脳に請け合うためだ。




[5月19日]  旧ユーゴスラビア諸国歴訪の初日の火曜、バイデンはボスニア・ヘルツェゴビナ首脳と会談した。この訪問の目的は、これらバルカン諸国が激しい民族紛争の歴史を乗り超え欧州主流派に仲間入りするため支援する、というオバマ政権の姿勢をアピールすることだ。

 01年の9・11テロとそれに続くアフガニスタン戦争、イラク戦争の間、アメリカは完全にバルカン地域への関心を失った。「アメリカは戻ってきた」と、バイデンは言った。「アメリカはあなた方と共にある」


 最後に引用した記事には、確かに「請け合う」という文言が欠けている。だが、これはまだ政権初期だったからだろう。

 心配なのは、アメリカの同盟国がいつまでバイデンの安請け合いを真に受けてくれるかということだ。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2009年10月20日(火)14時20分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 21/10/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジル、今年のPB赤字予想上振れ

ワールド

シンガポール6月コアCPI、前年比+2.9% 約2

ワールド

イラク、米主導有志連合軍の9月撤退開始を要望=消息

ワールド

原油、来年は供給過剰か ブレント70ドル台=モルガ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連時代の装備にも限界が...近づく局面の変化
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 6
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 7
    酔った勢いで彫った「顔のタトゥーは似合わない」...…
  • 8
    中国海軍、ロシアの手引きでNATOの海を堂々と正面突…
  • 9
    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…
  • 10
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 1
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい」と話題に
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 4
    出産間近!ヨルダン・ラジワ皇太子妃が「ロングワンピ…
  • 5
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 6
    トランプが銃撃を語る電話音声が流出「バイデンは親…
  • 7
    ミサイル迎撃の「劇的瞬間」と祝福の雄叫び...「普段…
  • 8
    「別人...」ウィル・スミスと一緒に写るジョニー・デ…
  • 9
    AI生成の「ネコ顔の花」に騙される人が続出!? ニ…
  • 10
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 6
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 7
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 8
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 9
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
  • 10
    携帯契約での「読み取り義務化」は、マイナンバーカ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story