コラム

中国がレアメタルを禁輸する?

2009年08月27日(木)16時30分

 中国が近く、多くのハイテク製品に欠かせない稀少金属(レアメタル)の供給を止めるかもしれないと、英テレグラフ紙は伝えた


 中国工業情報省が作成した報告書原案は、テルビウム、ジスプロシウム、イットリウム、ツリウム、ルテチウムの輸出を全面的に禁止することを求めている。ネオジム、ユウロピウム、セリウム、ランタンなどの他の金属の輸出には年間3万5000トンの上限を設けるという。世界需要をはるかに下回る量だ。

 主に内モンゴル自治区で採掘される中国の稀少金属は、世界の産出量の95%を占めている。その備蓄を増やそうとする今回の動きは、世界的な資源争奪戦が新たな段階に入ったということを示している。諸外国は、どんな高値を付けても中核材料を手に入れられないことになるかもしれない。

 これら希土類(レアアース)金属の価値と戦略的重要性は技術進歩と共にますます高まっているが、オーストラリアや北米、南米などの鉱床を新たな供給源として開拓するには何年もかかる。レアアースは発見するのがむずかしく、採掘するのはさらにむずかしい。


 また米ワイアード誌のネーサン・ホッジはこう書く


 これは戦略資源の影響、とくに米軍のハイテク装備に与える影響を見直すきっかけだ。

 もちろん、豊富な鉱物資源を利用して地政学的な優位に立とうとしているのは中国だけではない。ロシアは数年前から、天然ガスを使って近隣諸国に露骨な圧力をかけている。ロシア政府は、老朽化した大量の核兵器よりエネルギーのほうがはるかに効果的な手段になることに気がついた。誰かを罰したくなったら、単にガスの元栓を締めればいい、というわけだ。

 米戦略空軍司令部の古いスローガンのように、「相手の急所を握れば、心もついてくる」。


──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2009年08月26日(水)16時01分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 26/8/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:値上げ続きの高級ブランド、トランプ関税で

ワールド

訂正:トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 6
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マ…
  • 7
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 8
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story