貧困と闇を生む抗生物質
処方薬が高過ぎると常々愚痴を言っている人にとって興味深い研究が出た。オンライン医学ジャーナル「PLoSメディシン」が今日掲載したその研究は、より広い世界に目を開かせてくれる。我々が日常的に頼りにしている抗生物質を買うことで、貧困に転落してしまう人が世界には数千万人いるというのだ。
研究の対象に選ばれたのは、糖尿病や高血圧、喘息、感染症などごく普通の病気の治療によく使われる4つの抗生剤。中所得から低所得の国16カ国でこれらの薬がいくらで売られているかという情報を基に、患者たちがその薬を治療に使うとその国の貧困率がどれだけ上がるかを計算した。
■効果な治療薬で窮乏化
結果は、我々の長年の推測を見事に裏付けている。例えばウガンダの患者がブランド薬品を買ったとすると、一日1ドル25セント未満で暮らす貧困人口が34%増加する。中所得国のインドネシアでさえ、人口の39%が新たに貧困層入りするという。これは、中低所得国では所得水準に対する医薬品の価格が先進国より高くなっているからだ。
対策の一つとして、薬を寄付したり薬代を援助するための企業連合を設立する方法がある。だが、この方法にはデメリットもある。近く発表されるもう一つの研究によれば、アフリカでは寄付された薬を横流しして儲ける産業が生まれており、例えばマラリアの治療薬は6.5%が政府に届かず闇市場に流れているという。
もちろんこれらは多くが表裏一体の問題だ。多くの国の消費者にとって薬は高価すぎる。だからこそ闇で薬を買おうとするニーズがある。偽物の薬もそうだ。薬を手に入れようと必死の患者は、安いといわれると誘惑に負けやすい。たとえそれが偽物かもしれないと思っていても。
──エリザベス・ディッキンソン
[米国東部時間2010年09月01日(水)18時24分更新]
Reprinted with permission from "FP Passport", 2/8/2010.©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
世界「新兵募集CM」珍事情
米ゴシップサイトのゴーカーが熱心な"ユーチューブ・サーフィン"の末、世界各国の新兵募集CMのコレクションを発表した。
なかにはくだらないものもいくつかある。例えば、障害物訓練をする空挺部隊の前で教官がおかしなラップを歌うロシアのCM。とても3分は我慢できない。それに日本の海上自衛隊のCMも、手の込んだ作り物ではないかという気がする。それでも全体としては、極めて興味深いコレクションになっている。
アメリカ人として見ていてすぐ気づくのは、アメリカと違い、あからさまに愛国心に訴えるようなCMがほとんどないことだ。例外はエストニアとレバノンだが、エストニアはユーモラス。レバノンはスローモーションを使った感傷たっぷりの演出で辟易とさせられそうだが、領土を一つに保つための闘いに明け暮れてきたモザイク国家の歴史を思えば胸を打たれる。
一方、フランスとインドのCMは両方とも、9・11テロ以前の米軍のCMに似ている。入隊すれば最小限の戦闘と引き換えにどれだけいい暮らしが手に入るかを訴えるパターンだ(インド軍に入ると、一生ゴルフや飛び込みをして暮らせるようだ)。
■アメリカ人家庭の子守vs軍隊
ウクライナはもっと果敢かつストレートに、軍隊に入ると「女の子が手に入る」と訴えた。シンガポールのCMの目玉は、巨大なロボットに変身する海軍の艦船。おそらく、アメリカの海兵隊を長いこと苦しめてきた巨大モンスターを封じ込める任務を担っていると思われる。
イギリスの神経に障るCMは、アフリカの砂漠らしい場所で井戸を守る武装した男、興奮していきり立つ男から「あなたは水をもらえるか」と挑発する。拘束するか? 撃つか? いや、サングラスを外す。すると、相手の男が急にフレンドリーに変身。「大事なのは、目と目を合わせることだ」とくる。脱植民地主義の教科書みたいな内容だ。
こういう挑発型のアプローチも、イギリスではきっと効果があるのだろう。90年代、米軍がもっぱら大学の学費を本人に代わって負担することを売り込んでいたころ、イギリスでは英国海兵隊が訓練で芋虫を食べる広告を雑誌に出していたのだから。
だが、今回の新兵募集CM最大の勝者はスウェーデンだ。狂ったアメリカ人家庭の子守としてこき使われるくらいなら、より良い職業選択肢として戦車を乗り回し橋を吹き飛ばそうと若い女性を勧誘しているのだから。
──チャールズ・ホーマンズ
[米国東部時間2010年08月31日(火)13時42分更新]
Reprinted with permission from "FP Passport", 1/9/2010. ©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
ソマリア無視の大きすぎる代償

国会議員を運び出す兵士たち(8月24日) Omar Faruk-Reuters
ケニアの新しい駐米大使エルカナ・オデンボは、アメリカへのメッセージを携えて着任した。「ソマリアを無視すれば、アメリカ自身に禍が降りかかる」というメッセージだ。
ケニアの隣国ソマリアは、この5年間で無政府状態に近い国から、アフガニスタンのタリバン政権崩壊以降見かけなかったイスラム原理主義国家に向けて方向転換をしてきた。
「アフガニスタンとパキスタンにこれだけ投資しながら、テロリストがどこに向かっているかを気にしないなんてありえない」と、オデンボは警告する。「彼らが向かっている先として確実にわかっているのがソマリアだ」
その事実は疑いようがない。ソマリアの状況は一段と悪化している。2006年以降、イスラム原理主義組織アルシャバブをはじめとする多くの武装集団が、国土の大半を制圧してきた。アルシャバブは8月24日にも首都モガディシオのホテルを襲撃し、国会議員8人を含む30人以上を殺害したばかりだ。
アルカイダとつながりのあるアルシャバブは東アフリカでのジハード(聖戦)を掲げ、ソマリアで平和維持活動に従事する国々への報復を行っている。7月11日には、ウガンダの首都カンパラで2件の爆破テロを実行。アルシャバブ初の国外でのテロ行為は、ウガンダが平和維持活動に参加したことへの報復だという。
■アフリカ連合まかせでは解決しない
「このテロによって、アルシャバブが単にソマリア政府の足を引っ張るだけの武装勢力ではないことが明確になった。彼らはこの地域がかかえる問題であり、つまりは世界全体の問題だ」と、オデンボは言う。
それなのにアメリカや国際社会は、アフリカ連合(AU)に平和維持活動を強化させることで問題を解決しようとしている。実際、手の施しようがないほど困難な使命を遂行すべく、平和維持部隊の増派を約束しているアフリカ諸国も少なくない。
だがオデンボに言わせれば、それでは不十分だ。「50人の部隊がやってきて、次に70人の部隊がやってきて、今度はいくらかの資金が与えられ、いくらかの機材が与えられる。そんなバラバラな支援ではダメだ」
ではどんな支援が必要なのか。武装勢力を探し出して叩きのめすしか解決の道はないと、オデンボは言う。「私が入手した数字によれば、相手は3000人か、せいぜい4000人の集団だ。国際社会が本気で彼らを追い詰める気なら、アフガニスタンに展開したような兵力を投入して、奴らを追うと宣言すべきだ」
それは難しい注文だ。ソマリアどころか、アフガニスタンへの派兵でさえ自国民の理解を得るのは困難なのだから。
だが、ケニアはすぐ隣に崩壊国家が存在することのリスクを熟知している。ケニアはこの20年間、ソマリアが終わりなき無秩序状態に陥る様を目撃し、その影響を肌で感じてきた。現在も、50万人以上のソマリア人難民がケニア北部に滞在している。
だから、アメリカはケニアの忠告にしっかりと耳を傾けるべきだ。ソマリア問題を解決するのは容易ではない、という忠告を。
──エリザベス・ディキンソン
[米国東部時間2010年08月25日(水)10時29分更新]
Reprinted with permission from "FP Passport",26/8/2010.©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
豪「宙づり議会」の深〜い意味
8月21日に実施されたオーストラリア総選挙は、どの政党も下院議席の過半数に達せず、70年ぶりに「中ぶらりん議会」が生まれることになった。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの政治学者パトリック・ダンリービーによると、この選挙結果は、より専門的な意味でも大きな節目となる。
史上初めて、世界でウェストミンスター・モデル(イギリス型議院内閣制)を採用している主な国がすべて「中ぶらりん議会」の状態になった。これらの国は旧大英帝国に属し、正統派の政治学によれば、単独政権の強い政府を持つとされている。
ダンリービーの言うウェストミンスター・モデルの主要国とは、オーストラリアのほか、インド(18の政党による連立政権)、イギリス(あり得ないと思われていた保守党と自由民主党の連立政権)、ニュージーランド(96年以来どの党も過半数の議席を持たない)、カナダ(少数与党の政権)を指す。
ウェストミンスター・モデルの選挙制度は伝統的に「比較多数得票主義」であり、各選挙区で最大の得票を得た候補者が議席を得る。このため大政党に有利で、多数与党の政権をつくりやすい。これに対して、例えばドイツでは連立政権を組むのが普通だ。
では、選挙制度が多数与党を推進するように設計されているのに、なぜ多数与党が生まれにくくなっているのか。私は、政党間のイデオロギーの違いが小さくなっていることと関係あるのではないかと思う。インドは明らかに例外だが、この疑問は考えてみる価値があるはずだ。
ただし性急な改革を行う前に、議院内閣制の国の国民が覚えておくべきことがある。(アメリカのように)大統領制で2大政党制の国でも、議事進行妨害や機能不全というのは十分起こりうるということだ。
──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年08月23日(月)18時49分更新]
Reprinted with permission from "FP Passport" 24/8/2010. © 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
インド国会議員、給料3倍に不満
インドの国会議員の報酬が間もなく3倍以上に引き上げられ、その年収は過去最高の1万2854ドル(約110万円)になる。だが一部の議員にとっては、まだ物足りないようだ。
報酬引き上げは不十分だとして数人の議員が抗議するなか、下院は休会した。議員たちは、少なくとも上級官僚の給料と同じ月額8万ルピー(約15万円)まで引き上げるよう求めている。
つまり国会議員たちは、313%ではなく500%の昇給を要求しているのだ。
インド経済は今のところ快調なのだから、一見この話は理にかなっているように思える。
いやちょっと待てよ。この国は、国民1人当たり国内総生産(GDP)がいまだに年間1000ドル前後をさまよっているのではなかったか。国民の1割以上が失業しており、4割以上が1日1ドル25セント以下で暮らしている国ではなかったか。
──ブライアン・ファン
[米国東部時間2010年08月20日(金)12時42分更新]
Reprinted with permission from "FP Passport", 23/8/2010. © 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.


